在宅事件(ざいたくじけん)
【定義】
在宅事件とは、被疑者が身柄拘束されないまま捜査が行われる事件のことです。
【解説】
犯罪事実について犯人と疑わしい者や犯人と判明している者がいても、常に逮捕・勾留されるとは限りません。
逮捕には逮捕の必要性(逃亡・罪証隠滅のおそれ等。刑事訴訟規則143条の3)が、勾留には勾留理由(①住居不定、②罪証隠滅のおそれ、③逃亡のおそれ。刑事訴訟法60条)がそれぞれ要件として必要なうえ、たとえこれらが認められる可能性があっても、同じ捜査目的を達成できるのであればできるだけ強制処分を避けることが人権保障上望ましいからです(任意捜査の原則)。
被疑者にとっては、当然ながら身柄事件よりも在宅事件の方が負担が少ないといえますが、在宅事件の場合、身柄拘束の期間制限がかかってこないためにどうしても捜査期間が長期化するという傾向はあり、数か月を超えるケースも珍しくないようです。
ただ、のんびりしていたら思いがけないタイミングで起訴をされてしまうというケースもあるのです。
あらかじめ起訴の見込みやタイミングを教えてもらえるわけではありません。
在宅事件で注意すべきなのは、捜査機関からの電話連絡や呼び出しには誠実に対応することといえます。
連絡を絶ったり呼び出しを無視するようなことがあれば、一気に逃亡・罪証隠滅のおそれが強まり、身柄拘束に至ることも考えられるからです。
【参考条文】
刑事訴訟法 第60条第1項
裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
1 被告人が定まつた住居を有しないとき。
2 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
刑事訴訟規則 第143条の3
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。
【関連用語】