刑事弁護の基礎知識

被害届・告訴・告発

被害届とは、告訴とは、告発とは

被害届・告訴・告発は、一般的には混同されがちで、意味や違いの分かりにくいところです。

被害届を出すことは、被害者が捜査機関に対し犯罪に遭った被害の事実を申告することをいいます。

告訴とは、犯罪の被害者その他一定の者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求める意思表示をいいます。

告発とは、告訴権者及び犯人以外の第三者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求める意思表示をいいます。

被害届・告訴・告発の共通点

被害届も告訴も告発も、捜査機関に対して犯罪事実を申告する点で共通しており、これらがきっかけとなって、捜査機関の捜査が開始されることがあります(捜査の端緒と呼ばれます)。

被害届・告訴・告発の違い

被害届、告訴、告発の大きな違いは、その主体です。

被害届は犯罪の被害者、告訴は犯罪の被害者を含めた告訴権者が行い、告発は告訴権者と犯人以外誰でも行うことができます。

また、被害届は、犯罪事実の申告ですが、告訴と告発は、犯罪事実の申告だけでなく、犯人の訴追を求める意思表示であるという点も大きな違いです。

法的効果として、被害届では捜査機関に捜査義務が生じませんが、告訴・告発では捜査機関に捜査開始義務が生じます。

被害届

【主体】 犯罪の被害者

【手続き・方法】 実務上、警察官が被害者の話を聴きながら作成し、被害者が署名捺印する形が多い

【効果】 犯罪被害に遭った事実の申告

【期間制限】 特になし

告訴

【主体】 犯罪の被害者やその法定代理人、被害者死亡などの場合は一定の親族(刑事訴訟法第230条、第231条ほか)

【手続き・方法】 司法警察員(巡査部長以上の警察官)または検察官に対して書面または口頭で行う(同法第241条)。実務上は、告訴状を作成、提出することが多い

【 効果】 犯罪事実の申告及び犯人の訴追を求める意思表示。検察官から、起訴・不起訴の処分結果、不起訴の場合は不起訴理由の告知を受けることができる(同法第260条、第261条)

【期間制限】 親告罪(告訴がなければ公訴提起できない犯罪)について、期間制限(告訴期間)がある(同法第235条ほか)

告発

【主体】 誰でも(告訴権者及び犯人以外の第三者。刑事訴訟法第239条) 

【手続き・方法】 司法警察員(巡査部長以上の警察官)または検察官に対して書面または口頭で行う(同法第241条)。実務上は、告発状を作成、提出することが多い

【効果】 犯罪事実の申告及び犯人の訴追を求める意思表示。検察官から、起訴・不起訴の処分結果、不起訴の場合は不起訴理由の告知を受けることができる(同法第260条、第261条)

【期間制限】 特になし

 

 

 

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