刑事弁護の基礎知識

保釈と釈放の違い

釈放とは、保釈とは

釈放は、一般的な言葉の意味として、身体拘束から解放されることをいいます。逮捕、勾留、懲役刑や禁錮刑の執行などによって留置場や拘置所、刑務所などから出られること、身体解放されることを釈放といいます。

これに対し、保釈は、起訴後の被告人勾留による身体拘束を一時的に解いて身体解放することをいいます。

刑事事件・刑事弁護において、釈放と保釈は、身体解放されるタイミング、権利や手続きが違います。

釈放のタイミングや手続き

逮捕段階

逮捕されたとしても、

  • 犯罪の嫌疑がない(証拠不十分を含む)
  • 極めて軽微な犯罪である
  • 在宅事件(罪証隠滅や逃亡のおそれなどがなく、勾留しないで刑事事件を進行する事件)

などの場合は、釈放されることがあります。

勾留段階

被疑者として勾留されたとしても、

  • 犯罪の嫌疑がない(証拠不十分を含む)ため、不起訴とする
  • 軽微な犯罪である、被疑者に有利な事情があるなどのため、不起訴とする
  • 略式起訴(罰金刑のみの略式裁判の請求)

などの場合は、釈放されます。

その他、

  • 準抗告(勾留決定に対して不服申立てを行い、申立てが認められる場合)
  • 勾留取消請求(勾留決定後に事情が変化し、勾留の要件を満たさなくなった場合)
  • 勾留の執行停止(治療等のため入院が必要な場合や近親者の葬儀など一定の事情により一時的に勾留を停止する場合)

などによって、釈放されることもあります。

これらに加え、検察官の公判請求(起訴)後は、

  • 保釈

によって釈放されることがあります。

刑事裁判後

刑事裁判で有罪判決が言い渡されたとしても、

  • 罰金、科料
  • 刑の全部の執行猶予付き判決

であれば、釈放されます。

懲役刑・禁錮刑で実刑判決となった場合は、刑が執行されるため、判決言い渡しによって釈放されません。懲役刑・禁錮刑では、仮釈放や刑の執行終了により、釈放されることになります。

保釈による釈放のタイミングや手続き

保釈請求

保釈は、検察官によって公訴提起・公判請求された後に、裁判官又は裁判所に対して、請求します。

保釈は、被告人本人以外に、弁護人や一定の親族等も、請求することができます(刑事訴訟法第88条)。 

保釈の流れ

  1. 保釈請求書(証拠書類を添付)を、裁判官又は裁判所に対して、提出します。
  2. 担当裁判官が、保釈を認めるかどうか判断・検討するために、検察官に保釈について意見を求めます(同法第92条)。また、弁護人と面談することもあります。
  3. 保釈請求後、多くの場合は、即日~2日程度で、裁判官が保釈を決定します。保釈を認める場合、保釈保証金の金額が決定されます(同法第93条)。
  4. 保釈保証金を納付し、釈放されます(同法第94条)。

保釈による釈放のタイミング~早く保釈してもらうためには~

保釈請求してから釈放されるまでどれくらいかかるかは、保釈請求から早ければ1~2日程度、土日祝日を挟んだ場合などでもおおよそ1週間程度で保釈決定が出ることがほとんどです。

その後は、保釈金を納付するタイミング次第で、釈放されることになります。

保釈金は、100万円以上となるのが実務的な運用であり、銀行等にお金を預けている場合、金融機関の窓口営業時間や、ATMでも取引限度額などのために、保釈決定当日に保釈金を用意できず、納付できない場合があります。

また、保釈金は、裁判所の出納課に納付しますので、裁判所の開庁時間外には納付できません。

出来るだけ早い保釈による釈放を目指すならば、起訴前から保釈請求の準備を整え、起訴後すぐに保釈請求すること、そして、保釈決定前に保釈保証金の準備を整え、保釈決定後速やかに納付することが大切です。

保釈の要件

保釈は、次の事由がなければ、原則として認められることになっています(同法第89条。権利保釈と呼ばれます)。

  1. 死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪で起訴されている
  2. 前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪で有罪判決を受けたことがある
  3. 常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪で起訴されている
  4. 罪証隠滅のおそれがある
  5. 被害者などの事件の利害関係人やその親族などに危害や脅迫などを加えるおそれがある
  6. 氏名不詳又は住居不定(不明)

権利保釈が認められない場合でも、裁判官の裁量によって保釈が認められる場合もありますし(同法90条。裁量保釈と呼ばれます)、被告人勾留が不当に長くなった場合に保釈が認められる場合もあります(同法91条。職権保釈と呼ばれます)。

保釈保証金はどうなるのか?

保釈のために納付した保釈保証金は、被告人が、裁判所が保釈の際に定めた条件等を遵守して刑事裁判に出頭し、判決の言い渡しを受けた場合には、全額返金されます。

他方、被告人が裁判所の条件を遵守せず、逃亡した場合などは、保釈保証金の全額又は一部が没取(ぼっしゅ)されることになります。

保釈が認められるために

保釈は、被告人の権利であり、法律上は、上述の刑事訴訟法89条の除外事由がない限り、保釈は認められなければなりません。

もっとも、実際には、保釈が被告人の権利であるとは言い難い現状があります。

例えば、否認事件(起訴された事実を認めず、争う事件)や共犯ほか組織的な犯罪事件などで、罪証隠滅のおそれ(同条4号)があるとして権利保釈が認められないことがあります。

また、保釈が認められても保釈金を納付できなければ釈放されないことから、保釈保証金がないとの理由で、そもそも保釈請求しないというケースも多いといえます。

一般的に、保釈が認められるためには、刑事訴訟法89条の除外事由がないことのほか、次のような事情や証拠等があるとよいといえます。

  • 身元引受人がいる
  • 被害者と示談している
  • 本人が反省している、謝罪文等がある
  • その他、保釈を認めるべき特別の事情がある

 

弁護士法人中部法律事務所は、名古屋駅前徒歩4分の弁護士・法律事務所です。 刑事弁護の経験豊富、保釈・釈放に強い法律事務所です。名古屋エリア(愛知・岐阜・三重)の刑事事件で弁護士をお探しの方は、当法律事務所の無料法律相談(来所初回30分無料)をお申込みください。

関連記事

刑事事件の流れ

刑事事件の流れ 刑事事件の発生から、第一審判決言渡しまでの流れです。 ①刑事事件の発生 被害者が警察に相談 届出(被害届・告訴・告発) 110番通報 職務質問や現行犯 自首 などにより、警察が刑事事件の発生を認識します。 … 続きを見る

身柄事件と在宅事件の違い

身柄事件とは、在宅事件とは  身柄事件とは、被疑者・被告人の身体を拘束の上、捜査や裁判が進められる事件をいいます。 他方、在宅事件は、被疑者・被告人の身体を拘束せず、捜査や裁判が進められる刑事事件をいいます。   身柄事 … 続きを見る

刑罰の種類-懲役,禁固,罰金,拘留,科料,没収-

刑事裁判で有罪判決となる場合、判決主文で刑罰が言い渡されます。 刑罰の種類として、刑法第9条が「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。」として、6種類の主刑と、没収という附加刑を規定していま … 続きを見る

判決の種類・執行猶予付き判決

  判決の種類・分類 刑事裁判で言い渡される判決には、次表のとおり、いくつかの種類・パターンがあります。 その大きな分類は、有罪判決か無罪判決かです。 実務上は、多くの刑事裁判で有罪判決が言い渡され、犯罪の成立を争わない … 続きを見る

被害届・告訴・告発

被害届とは、告訴とは、告発とは 被害届を出すことは、被害者が捜査機関に対し犯罪に遭った被害の事実を申告することをいいます。 告訴とは、犯罪の被害者その他一定の者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求める意思 … 続きを見る

私選弁護人と国選弁護人の違い

私選弁護人とは、国選弁護人とは 刑事事件の弁護人には、私選弁護人と国選弁護人がいます。 私選弁護人とは、ご本人(被疑者や被告人とされている方)やご家族が、委任契約に基づいて弁護士費用を支払い、選任した刑事弁護人をいいます … 続きを見る

逮捕と勾留の違い

逮捕とは、勾留とは 逮捕は、ニュースなどでもよく使われていますが、勾留は、あまり聞き慣れず、逮捕との違いも一般的には分かりにくいところです。 逮捕とは、被疑者に対する短時間(最大72時間)の身体拘束をいいます。 逮捕は、 … 続きを見る

前科・前歴の違い

前科とは、前歴とは 前科と前歴は、一般的には混同されがちですが、刑事事件、刑事弁護では、全く異なるものです。 前科とは、有罪判決を受けた経歴のことをいいます。 懲役刑・禁錮刑だけでなく、罰金刑であっても、有罪であれば前科 … 続きを見る
名古屋駅徒歩4分 無料法律相談実施中