刑事弁護の基礎知識

逮捕と勾留の違い

逮捕とは、勾留とは

逮捕は、ニュースなどでもよく使われていますが、勾留は、あまり聞き慣れず、逮捕との違いも一般的には分かりにくいところです。

逮捕とは、被疑者に対する短時間(最大72時間)の身体拘束をいいます。
逮捕は、逮捕状による通常逮捕によるのが原則ですが、その例外として現行犯逮捕と緊急逮捕があります。

これに対し、勾留とは、逮捕に引き続いて行われる被疑者または被告人に対する長期の身柄拘束をいいます。
勾留は、勾留状を必要とし、例外はありません。
起訴前の被疑者に対する勾留(起訴前勾留、被疑者勾留と呼ばれます)と、起訴後の被告人に対する勾留(起訴後勾留、被告人勾留と呼ばれます)、2段階の勾留があります。

逮捕と勾留-被疑者・被告人の権利・その他具体的な取り扱いの違い-

被疑者や被告人にとっては、身体拘束され、警察の留置施設や拘置所などの刑事施設に収容されるという点では、逮捕も勾留も同じです。
身体拘束される被疑者・被告人にとっての具体的な違いは、次表のとおりです。

【逮捕】 × 弁護人以外との接見・面会
× 国選弁護人の選任(逮捕時点では選任されません)
○ 私選弁護人の選任
× 保釈請求
主な拘束場所:警察署の留置施設(代用監獄と呼ばれています)
主な手続き:警察官による取調べ、検察官による取調べ 
拘束期間:最大72時間
【被疑者勾留・起訴前勾留】

○ 接見・面会(弁護人以外は接見等が禁止される場合があります)
○ 国選弁護人の選任(私選弁護人を選任しない場合)
○ 私選弁護人の選任
× 保釈請求
主な拘束場所:警察署の留置施設(代用監獄と呼ばれています)
主な手続き:警察官による取調べ、検察官による取調べ、引きあたり捜査などの各種捜査
拘束期間:原則10日、最大10日間の延長可

【被告人勾留・起訴後勾留】 ○ 接見・面会(弁護人以外は接見等が禁止される場合があります)
○ 国選弁護人の選任(私選弁護人を選任しない場合)
○ 私選弁護人の選任
○ 保釈請求
主な拘束場所:拘置所
主な手続き:公判手続
拘束期間:刑事裁判終了まで

○ 逮捕について

・拘束時間が短いため、弁護人以外との接見・面会は認められていません
・国選弁護人は選任されません
・私選弁護人は選任できます
・保釈請求権がなく、保釈は認められません。
・逮捕は、捜査段階の手続きですので、通常、逮捕中に、警察官や検察官による取調べを受けます。通常、収容先が警察署内の留置施設になります。
・逮捕は、最大72時間までしかできず、制限時間内に勾留請求するか、釈放するかしなければなりません。

 

○ 被疑者勾留・起訴前勾留について

・弁護人以外も接見・面会可能です(接見禁止命令が出ている場合を除く)
・貧困等のため、私選弁護人を選任することが出来ない場合、国選弁護人を選任してもらうことができます
・私選弁護人を選任できます
・保釈請求権がなく、保釈は認められません。
・被疑者勾留・起訴前勾留は、捜査段階の手続きですので、警察官や検察官から取調べを受けるほか、引き当たり捜査や実況見分への立ち会いなど、各種捜査を受けることになります。通常、収容先が警察署内の留置施設になります。
・被疑者勾留・起訴前勾留は、原則として10日間勾留されます。ただし、その後1回、最大10日間の延長が可能です(内乱罪など一定の重大犯罪はさらに1回、最大5日間延長できます)。この期間内に、検察官は、起訴するか、釈放するかを決めなければなりません。

○ 被告人勾留・起訴後勾留について

・弁護人以外も接見・面会可能です(接見禁止命令が出ている場合を除く)
・貧困等のため、私選弁護人を選任することが出来ない場合、国選弁護人を選任してもらうことができます。被疑者段階で国選弁護人が付いていた場合、通常は、被疑者国選を担当した弁護士がそのまま被告人の国選弁護人になります。
・私選弁護人を選任できます
・被告人勾留・起訴後勾留は、公判段階(刑事裁判の段階)の手続きですので、原則として、捜査は行われません。通常、収容先は拘置所になります。
・被告人勾留・起訴後勾留の勾留期間は、起訴後、刑事裁判が終わるまで、保釈等が認められない限り、続きます。最初に起訴から2ヶ月間の勾留が決定され、裁判終了まで、1ヶ月毎に更新されます。第1審判決で、懲役刑や禁錮刑の実刑判決が言い渡されなければ、釈放されます。

 

 

 

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