私選弁護人と国選弁護人の違い

私選弁護人とは、国選弁護人とは

刑事事件の弁護人といえば、私選弁護人と国選弁護人。ただ、これらの違いは一般的には分かりにくいところです。

私選弁護人とは、ご本人(被疑者や被告人とされている方)やご家族が、委任契約に基づいて弁護士費用を支払い、選任した刑事弁護人をいいます。
国や地方公共団体ではなく、私人が選任した弁護人ですから、私選弁護人と呼ばれます。
私選弁護の場合、依頼する弁護士を自由に選択することができ、また、弁護士費用など、弁護士との契約で決めることになります。

これに対し、国選弁護人とは、国が選任した刑事弁護人です。
ご本人は、弁護士を自由に選択することはできませんし、国が、弁護士報酬も決め、弁護士に報酬を支払います。

私選弁護人にするか、国選弁護人にするか
刑事事件の弁護人は、私選弁護人を選任することが原則となっています。
国選弁護人が選任されるのは、全犯罪、全刑事事件の内、限られた条件を満たす場合のみです。

【国選弁護人が選任される要件】

  •  貧困等のため、私選弁護人を選任することができない(現金や預貯金などの資産が50万円に満たない)
  •  死刑及び、無期懲役または長期3年を超えるの懲役、禁錮刑にあたる刑事事件で、勾留された場合(被疑者国選と呼ばれます。)
  •  起訴された(被告人国選と呼ばれます。略式起訴を除きます。)

つまり、

・自ら私選弁護人を選任できる場合、国選弁護人は選任されません。
・起訴される前は、一定の重大事件で勾留されない限り、国選弁護人は選任されません。
・起訴される前は、勾留されたとしても一定の重大事件でない場合、国選弁護人は選任されません。
・在宅事件では、起訴されない限り、国選弁護人は選任されません。”

私選弁護人と国選弁護人の弁護活動の違い

私選弁護人であっても、国選弁護人であっても、弁護人に認められている権限は基本的に同じです。
したがって、本来、弁護活動の内容に違いは生じないといえます。

けれど、国選弁護人は、私選弁護人と比べて、やる気・熱意がない、熱心でないなどと言われることがあるのも事実です。
これは、当該弁護士の人格・個性によるものが多いと思われますが、私選弁護が、契約に基づいた弁護活動であるということも1つの原因でしょう。
一般的には、国選弁護に比べて私選弁護の方が弁護士費用・報酬が高いですし、私選弁護ならばご本人様が求める弁護活動を契約内容として具体的に定める(例えば、○回以上は接見を行うこと、保釈請求を行うことなど)ことも可能です。何より、私選弁護の場合、弁護士を選任したご本人様やそのご家族は、ご依頼者様(お客様)です。

他方、国選弁護人の弁護人報酬は、一般的には低額と言われており、ご本人様やそのご家族との契約に基づくわけではありませんから、契約を解約・解除することもできませんし、弁護士の解任権限などもありません。

このような違いが、弁護活動の内容や弁護士の態度に、違いを生じさせているかもしれません。

私選弁護人のメリット・デメリット

私選弁護人のメリットはいくつかありますが、主なメリットは、次のとおりです。

① 依頼人・依頼者として、弁護士に対し、充実・満足・納得した弁護活動の実施を求めることができる
② いつでも選任することができ、刑事事件の早期解決(勾留されないようにする、起訴されない・不起訴処分にする)を図ることができる
③ 事件の重大性・軽微性を問わず、弁護人を付けられる

① 充実した弁護活動

上記のとおり、私選弁護の場合、弁護士を選任したご本人様・ご家族様は、弁護士にとってご依頼者様ですから、ご依頼者様に納得・満足の頂ける弁護活動を行います。

② 刑事事件の早期解決

国選弁護は、起訴後、どんなに早くても勾留された後でなければ、選任されません。
つまり、ご本人様が勾留されないよう、事前に刑事弁護を行うことはできません。
また、一定の重大事件で勾留された場合でも、勾留期間は原則10日(延長されても最大20日)ですので、その間にできる国選弁護人の弁護活動には時間的な限界もあります。
私選弁護であれば、刑事事件の発生直後から、弁護人を選任し、被害者との示談を図り、ご本人に有利な事情を明らかにするなどの弁護活動を受け、逮捕されない、勾留されない、起訴されないなど刑事事件の早期解決を図ることができます。

③ 軽微な事件でも弁護人を付けられる

軽微な事件(罰金刑や長期3年以下の懲役・禁錮刑にあたる事件)であるならば、被害者との示談を図り、ご保人に有利な事情を明らかにして、起訴されないよう刑事事件を解決したいところだと思います。
けれど、このような事件では、国選弁護人は、起訴されない限り、選任されません。
私選弁護であれば、軽微な事件でも選任することが可能で、逮捕・勾留・起訴されないよう弁護を受けることができます。
なお、国選弁護の対象とならない軽微な事件の例としては、痴漢、盗撮・のぞきなどの迷惑防止条例違反、児童に対するいん行など青少年保護育成条例違反、公然わいせつ罪やわいせつ文書頒布等罪(刑法第174条、同法175条)、暴行罪(同法208条)、住居侵入罪(同法130条)、脅迫罪(同法222条)、器物損壊罪(261条)などがあります。

このほか、ご本人様・ご依頼者様自身が弁護士を選ぶことができること、契約に基づいて解除・解約ができることなどもメリットにあげることができます。

これに対し、私選弁護人のデメリットは、ただ1つ、弁護士費用・弁護士報酬です。
国選弁護人の場合、弁護士費用・報酬額は国が定めており、その金額は一般的には低額と言われています。私選弁護では、国選弁護に比べ、弁護士費用が高くなる場合が多いです。
また、国選弁護の場合、ご本人が国選弁護報酬を負担しなくてもよい(実質無料)とされるケースも多いです。
なお、実務上、執行猶予付き判決を得た場合、判決によって、訴訟費用(国選弁護人の弁護報酬を含む)の負担を求められます。

 

 

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