公判(こうはん)
【定義】
公判という言葉には広義と狭義の二つの用いられ方があります。広義の公判とは、公訴が提起されてから裁判が終了するまでの一連の手続段階のことです。狭義の公判とは、公判期日に法廷で行われる 審理のことです。
【解説】
(1)被告人の出頭義務
刑事事件が起訴されると、公判(広義の公判)が始まります。
まず、裁判所が第1回公判期日を指定し、被告人に召喚状を送達するとともに、弁護人や検察官等に通知します(刑事訴訟法273条)。被告人と弁護人は、指定された日時に指定された法廷に出頭します。
期日は厳守しなければなりません(同281条の6第2項)。被告人が出頭しないと、原則としてその日の公判(狭義の公判)を開くことができません(同286条)。どうしても出られない事情があれば、診断書等の疎明資料を提出して裁判所にそれを伝えます(同278条)。やむを得ない事情と認められれば、公判期日が変更されることもあります(同276条、刑事訴訟規則179条の4第2項)。しかし、資料提出をせず、無断で出頭しないようなことがあると、勾引され(刑事訴訟法58条)、さらに逃亡のおそれありとして勾留される(同60条)ことにもつながりますので絶対に避けるべきです。
(2)法廷
「法廷」というのは、裁判所内にある公判のための部屋のことです。傍聴席と関係人席が柵で仕切られ、関係人席には裁判官席、書記官席、検察官席、被告人席、弁護人席などがあります。大きな裁判所になると、刑事事件を扱う部(刑事第1部、刑事第2部など)がいくつにも分かれ、法廷も数多くあり(第○○○号法廷など)、部によって使用する法廷が決まっていたりします。
在宅事件の被告人は弁護人と一緒に傍聴席側から入ります。
身柄拘束中の被告人は、拘置所等の勾留場所から当日朝に専用のバスなどで裁判所へ移送され、裁判所付属の留置施設に入ります。そこで時間になると、刑務官に連れられて、一般人とは別の専用の通路やエレベーターを使って移動し、裁判官席の方にある入り口から法廷に入ります。法廷に入るところまでは手錠と腰縄がかけられていますが、開廷前に外されます(同287条)。
(3)公判中心主義
公判は、傍聴人が入ることができ、国民一般に公開されているという点に大きな意味があります。プライバシーの意識が強い昨今では公開をマイナスのイメージで捉えがちですが、そもそもは国家権力が適正に行使されているかどうかを国民の目で見張るという大事な役割があるのです。憲法82条が定める公開裁判の原則を刑事事件の分野で担っているのが公判手続きです。
そのため、被告人の陳述を聴いたり、証人の証言を聴いたり、書証や証拠物を取り調べるといった事件の内容を明らかにする作業は公判で行わなければならないという考え方(公判中心主義)で、刑事訴訟法の各手続きが組み立てられています。被告人の有罪・無罪は「決定」や「命令」ではなく「判決」の形で宣言しなければならず(同335条、336条)、「判決」は必ず口頭弁論を経なければならないとされます(同43条)。ここでいう「口頭弁論」は狭義の公判と同義です。
【参考条文】
刑事訴訟法第273条〜第281条の2、第281条の6〜第290条
刑事訴訟規則第179条〜第187条の4
【関連用語】
- 起訴(きそ)
- 勾留(こうりゅう)
- 拘置所(こうちしょ)
- 在宅事件(ざいたくじけん)
- 身柄事件(みがらじけん)
- 判決(はんけつ)
公判期日の召喚を受けたら、弁護人と打ち合わせして準備内容を確認しましょう。ご不安のある方は当事務所までご相談ください。名古屋エリア(愛知県・岐阜県・三重県)の即日面会に対応しております。