用語集

訴訟条件(そしょうじょうけん)

【定義】

訴訟条件とは、刑事裁判で有罪か無罪かについての審理をしたり判決を下すための条件です。訴訟条件が備わっていないことがわかった場合、訴訟を打ち切らなければなりません。

【解説】

(1)実体と形式

 刑事訴訟の審理・判決は、実体審理・実体判決と形式審理・形式判決とに分かれます。

 実体というのは、刑法その他の犯罪と刑罰を定めた法律に照らして、有罪か無罪かということです。

 形式というのは、刑事訴訟法その他の手続法に照らして、手続がきちんと守られているかということです。刑事訴訟の手続は単なる手順ではなく、被告人の権利を保護し、刑罰権の適正な行使を実現するための厳粛なルールなので、手続が守られていることが、実体審理・実体判決の前提でなければならないのです。

 この手続的なルールが訴訟条件だといえます。刑事訴訟法では多様な訴訟条件を類型的に整理して、それぞれ具備されていない場合に言い渡すべき裁判の種類と結びつけて規定しています。

 

(2)訴訟条件の種類

 訴訟条件が具備されていない場合に言い渡すべき裁判の種類とは、①管轄違いの判決、②公訴棄却の決定、③公訴棄却の判決、④免訴の判決です。それぞれに結びつく訴訟条件を見ていきます。

①管轄違いの判決(刑事訴訟法329条)

 裁判所には土地管轄と事物管轄があり、この管轄を間違えて裁判権のない裁判所に起訴してしまうと、管轄違いの判決により訴訟が打ち切られます。ただし、土地管轄については被告人が構わなければそれでよいと考えられるので、証拠調べ開始前に被告人の申立があった場合だけ、管轄違いの判決をします(同331条)。管轄について、詳しくは「管轄」の項を参照してください。

②公訴棄却の決定(同339条)

(1)起訴状謄本が2ヶ月以内に被告人に送達されなかった場合(同271条2項)

(2)起訴状の記載事実が認められたとしても何の罪にもならない場合

(3)検察官が公訴を取り消した場合(同257条)

(4)被告人の死亡または法人の消滅の場合

(5)同一事件を異なる裁判所に二重起訴した場合(同10条、11条)

③公訴棄却の判決(同338条)

(1)被告人に対する裁判権がない場合

(2)公訴取消後に再起訴されたが「新たな重要な証拠」という要件が満たされていない場合(同340条)

(3)同一事件を同じ裁判所に二重起訴した場合

(4)その他起訴の手続違反:親告罪の告訴がない、訴因が特定されていない、起訴状に余事記載がある、少年事件なのに家庭裁判所を経由していない、道交法違反なのに反則金納付の通告をしていないなどです。

なお、②の決定との違いとして、③の判決では口頭弁論を開き、それに基づいて判断しなければなりません(同43条1項)。

④免訴の判決(同337条)

(1)同一事件についてすでに確定判決があった場合(一事不再理の原則)

(2)犯罪後の法令で刑が廃止された場合

(3)大赦があった場合(「恩赦」の項を参照)

(4)公訴時効が完成した場合(「公訴時効」の項を参照)

免訴は①〜③と異なり、これが言い渡されると同じ事件について再び起訴することは許されなくなります(一事不再理の効果が生じる)。 

【参考条文】

刑事訴訟法第329条

被告事件が裁判所の管轄に属しないときは、判決で管轄違の言渡をしなければならない。但し、第二百六十六条第二号の規定により地方裁判所の審判に付された事件については、管轄違の言渡をすることはできない。

刑事訴訟法第330条 

高等裁判所は、その特別権限に属する事件として公訴の提起があつた場合において、その事件が下級の裁判所の管轄に属するものと認めるときは、前条の規定にかかわらず、決定で管轄裁判所にこれを移送しなければならない。

【関連用語】

  • 管轄(かんかつ)
  • 起訴(きそ)
  • 送達(そうたつ)
  • 公訴取消(こうそとりけし)
  • 少年事件(しょうねんじけん)
  • 確定(かくてい)
  • 一事不再理(いちじふさいり)
  • 恩赦(おんしゃ)
  • 公訴時効(こうそじこう)

 

起訴されたら、証拠の収集など実体面で対応を準備するのと同時に、訴訟条件があるかどうかという形式面のチェックも必要です。ご不安がある方は当事務所までご相談ください。名古屋エリア(愛知県・岐阜県・三重県)の即日面会に対応しております。

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