代用刑事施設(だいようけいじしせつ)
【定義】
代用刑事施設(または代用監獄)とは、警察署の留置場を刑事施設の代用として用いて、主に勾留中の被疑者を収容することです。
【解説】
平成18年に監獄法が全面改正されて「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下、「刑事収容法」)」という名称に変わり、同時に刑事訴訟法などで用いられていた「監獄」という用語も「刑事施設」に改められました。
かつて「代用監獄」と呼ばれていた制度も、現在は「代用刑事施設」です。
刑事訴訟法によれば、勾留の場所は「刑事施設」であり(64条1項)、全国の拘置所・拘置支所等に収容すべきことになります。
しかし、刑事収容法により、勾留される者を「刑事施設に収容することに代えて」警察署の留置場に収容することが認められています(同法3条、15条)。
留置場を代用できる条件については何も規定がないので、拘置所が原則で留置場は例外という位置付けにもなっていません。
そこで、捜査中の被疑者については広く代用刑事施設を活用する運用が一般的になり、現在に至っています。
活用される一番の理由は、捜査のためにも被疑者の防御(特に弁護人との接見)のためにも便利だからです。
しかし、捜査機関自身が身柄を押さえながら取調べを続けることには自白の強要などの危険もあり、昔から問題視する声が強いところです。
そのため、警察署内部で留置担当の部署を独立させ、留置担当官と捜査官を分離する仕組みも取られています(刑事収容法16条3項)。
【参考条文】
刑事訴訟法第64条第1項
勾引状又は勾留状には、被告人の氏名及び住居、罪名、公訴事実の要旨、引致すべき場所又は勾留すべき刑事施設、有効期間及びその期間経過後は執行に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第3条
第1項
刑事施設は、次に掲げる者を収容し、これらの者に対し必要な処遇を行う施設とする。
一 懲役、禁錮又は拘留の刑の執行のため拘置される者
二 刑事訴訟法 の規定により、逮捕された者であって、留置されるもの
三 刑事訴訟法 の規定により勾留される者
四 死刑の言渡しを受けて拘置される者
五 前各号に掲げる者のほか、法令の規定により刑事施設に収容すべきこととされる者及び収容することができることとされる者
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第14条
第1項
都道府県警察に、留置施設を設置する。
第2項
留置施設は、次に掲げる者を留置し、これらの者に対し必要な処遇を行う施設とする。
一 警察法 (昭和二十九年法律第百六十二号)及び刑事訴訟法 の規定により、都道府県警察の警察官が逮捕する者又は受け取る逮捕された者であって、留置されるもの
二 前号に掲げる者で、次条第一項の規定の適用を受けて刑事訴訟法 の規定により勾留されるもの
三 前二号に掲げる者のほか、法令の規定により留置施設に留置することができることとされる者
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第15条
第1項
第3条各号に掲げる者は、次に掲げる者を除き、刑事施設に収容することに代えて、留置施設に留置することができる。
一 懲役、禁錮又は拘留の刑の執行のため拘置される者(これらの刑の執行以外の逮捕、勾留その他の事由により刑事訴訟法 その他の法令の規定に基づいて拘禁される者としての地位を有するものを除く。)
二 死刑の言渡しを受けて拘置される者 三 少年法 (昭和二十三年法律第百六十八号)第十七条の四第一項 、少年院法 (平成二十六年法律第五十八号)第百三十三条第二項 又は少年鑑別所法 (平成二十六年法律第五十九号)第百二十三条 の規定により仮に収容される者 四 逃亡犯罪人引渡法 (昭和二十八年法律第六十八号)第五条第一項 、第十七条第二項若しくは第二十五条第一項、国際捜査共助等に関する法律 (昭和五十五年法律第六十九号)第二十三条第一項 又は国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律 (平成十九年法律第三十七号)第二十一条第一項 若しくは第三十五条第一項 の規定により拘禁される者
第2項
法務大臣は、国家公安委員会に対し、前項の規定による留置に関する留置施設の運営の状況について説明を求め、又は同項の規定により留置された者の処遇について意見を述べることができる。
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第16条第3項
留置担当官は、その留置施設に留置されている被留置者に係る犯罪の捜査に従事してはならない。