別件逮捕(べっけんたいほ)
【定義】
別件逮捕とは、取調べたい事件について逮捕の要件が整っていないため、軽微な別の事件で逮捕し、その余罪捜査という形で目的としていた事件について取り調べる捜査手法のことです。
【解説】
逮捕には「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある」という要件が必要です。
他の証拠等から合理的に推認して相当程度に強い嫌疑があればよいのですが、それすらない、たとえばわずかな状況証拠と捜査官の勘しかないような場合、粗探しをして立件しやすい罪を見つけ、その罪(別件)で逮捕状を取って逮捕してしまうという手法があります。
そして別件について取調べを行いつつ、もともと疑っていた罪(本件)についても余罪として取調べを行います。
このやり方は一見すると形式的には適法なようですが、本件について逮捕の厳しい法規制をかいくぐるという一面を持っています。
そこで、学説では古くから別件逮捕を令状主義に反する違法な逮捕だとする意見が多く、判例にも違法と判断するものがあります。
実務上、あからさまな別件逮捕は少なくなってきているようですが、逮捕・勾留された被疑事実と取調べられている事実の関係には注意すべきです。逮捕・勾留事実と無関係な事実の方を主として取り調べるような場合には、違法な別件逮捕の可能性が高くなります。
【参考条文】
刑事訴訟法第199条
1項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
2項 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
3項 検察官又は司法警察員は、第1項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。
【関連用語】