捜査機関(そうさきかん)
【定義】
捜査機関とは、日本の刑事司法制度上、捜査を担当する機関のことです。刑事訴訟法により、司法警察職員、検察官、検察事務官が捜査機関と定められています。
【解説】
司法警察職員とは、警察官のほか、海上保安庁法、自衛隊法、麻薬及び向精神薬取締法、労働基準法などの特別法によって一定の罪について「刑事訴訟法の規定による司法警察職員として職務を行う。」と定められている官職の者をいいます。司法警察職員は、さらに上下に司法警察員と司法巡査とに分かれます。警察官の場合、公安委員会により巡査部長以上が司法警察員、巡査が司法巡査と定められています。司法巡査は、たとえば通常逮捕状の請求ができない、告訴や自首の受理ができないなど、捜査のための権限に制限があります。
検察官は、検察庁に属する官吏のように思われがちですが、そうではなく一人一人が検察権の行使権限を持つ官庁であり、犯罪の捜査のほか、公訴提起、公判における当事者としての活動、刑の執行の指揮といった重要な任務を担っています。捜査機関として、検察官は警察官の上司というわけではなく、独立の機関として互いに協力することを基本としています。ただ、検察官は警察官に対し一般的指示権、一般的指揮権、具体的指揮権を持って捜査内容をコントロールし、自ら捜査を行うこともあります。
検察事務官は、検察庁の職員です。検察官を補佐し、その指揮を受けて捜査を行うことができます。
【参考条文】
海上保安庁法第31条
・第1項
海上保安官及び海上保安官補は、海上における犯罪について、海上保安庁長官の定めるところにより、刑事訴訟法 (昭和23年法律第131号)の規定による司法警察職員として職務を行う。
・第2項 海上保安官及び海上保安官補は、第28条の2第1項に規定する場合において、同項の離島における犯罪について、海上保安庁長官が警察庁長官に協議して定めるところにより、刑事訴訟法 の規定による司法警察職員として職務を行う。
自衛隊法第96条
・第1項
自衛官のうち、部内の秩序維持の職務に専従する者は、政令で定めるところにより、次の各号に掲げる犯罪については、政令で定めるものを除き、刑事訴訟法 (昭和23年法律第131号)の規定による司法警察職員として職務を行う。
1 自衛官並びに統合幕僚監部、陸上幕僚監部、海上幕僚監部、航空幕僚監部及び部隊等に所属する自衛官以外の隊員並びに学生、訓練招集に応じている予備自衛官及び即応予備自衛官並びに教育訓練招集に応じている予備自衛官補(以下この号において「自衛官等」という。)の犯した犯罪又は職務に従事中の自衛官等に対する犯罪その他自衛官等の職務に関し自衛官等以外の者の犯した犯罪
2 自衛隊の使用する船舶、庁舎、営舎その他の施設内における犯罪
3 自衛隊の所有し、又は使用する施設又は物に対する犯罪
・第2項
前項の規定により司法警察職員として職務を行う自衛官のうち、三等陸曹、三等海曹又は三等空曹以上の者は司法警察員とし、その他の者は司法巡査とする。
検察庁法第4条
検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。
検察庁法第6条
・第1項
検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる。
・第2項
検察官と他の法令により捜査の職権を有する者との関係は、刑事訴訟法 の定めるところによる。
検察庁法第27条
・第1項
検察庁に検察事務官を置く。
・第2項
検察事務官は、二級又は三級とする。
・第3項
検察事務官は、上官の命を受けて検察庁の事務を掌り、又、検察官を補佐し、又はその指揮を受けて捜査を行う。
刑事訴訟法第189条
・第1項
警察官は、それぞれ、他の法律又は国家公安委員会若しくは都道府県公安委員会の定めるところにより、司法警察職員として職務を行う。
・第2項
司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。
刑事訴訟法第190条
森林、鉄道その他特別の事項について司法警察職員として職務を行うべき者及びその職務の範囲は、別に法律でこれを定める。
刑事訴訟法第191条
・第1項
検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる。
・第2項
検察事務官は、検察官の指揮を受け、捜査をしなければならない。
刑事訴訟法第192条
検察官と都道府県公安委員会及び司法警察職員とは、捜査に関し、互に協力しなければならない。
刑事訴訟法第193条
・第1項
検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。この場合における指示は、捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する一般的な準則を定めることによつて行うものとする。
・第2項
検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮をすることができる。
・第3項
検察官は、自ら犯罪を捜査する場合において必要があるときは、司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができる。
・第4項
前三項の場合において、司法警察職員は、検察官の指示又は指揮に従わなければならない。