任意同行(にんいどうこう)
任意同行とは、警察官などが被疑者らに警察署などへの同行を求め、相手が任意に応じて赴くことをいいます。強制処分である逮捕と異なり、あくまで本人の同意を前提とする任意処分です。
任意同行には2つの場面がある
被疑者に対する任意同行には、法的な位置づけが異なる2つの場面があります。
- 職務質問に伴う任意同行 — その場で質問することが本人に不利になる場合などに、近くの警察署などへ同行を求めるものです(警察官職務執行法2条2項)。
- 捜査(取調べ)のための任意同行 — 犯罪の捜査に必要があるとき、被疑者に出頭を求めて取り調べるものの一環です(刑事訴訟法198条1項)。捜査官が同行せず、電話や呼出状で出頭を求める場合は任意出頭と呼ばれます。
逮捕との違い
被疑者を警察署へ連れて行くもう一つの方法が逮捕です。両者の違いは次のとおりです。
| 任意同行 | 逮捕 | |
|---|---|---|
| 性質 | 任意処分(同意が前提) | 強制処分 |
| 令状 | 不要 | 原則として逮捕状が必要 |
| 拒否 | 拒むことができる | 拒めない |
逮捕は、手錠の使用など有形力を用い、本人の意思に反して身体を拘束できる強制処分であるため、原則として逮捕状を要するなどの厳格な要件が定められています。これに対し、任意同行は本人が任意に応じることが前提で、手錠の使用や、脅迫などで意思を抑え込むことは許されません。
拒否できるか・「実質的な逮捕」の問題
任意同行はあくまで任意ですから、応じるかどうかは本人が決めることができ、いったん同行した後も帰宅を求めることができます。ただし、そこまでの強制的な手段が用いられていない場合、どこまでが適法な任意同行かの線引きは簡単ではありません。裁判例では、犯罪の嫌疑の程度、本人の抵抗の程度、周囲の状況などの事情に応じて判断されているとされています。明確に帰宅の意思を告げたのに引き止められたようなときは、実質的な逮捕とみなされ違法と評価される場合もあります。一方で、逃走しようとするのを制止するために立ち塞がったり手を掴んだりする程度の有形力の行使については適法とされた事案もあります。
同行後には取調べが行われることが多いですが、この取調べに応じる義務(受忍義務)はなく、いつでも中断や退去を求めることができます。
弁護人との連絡は任意の段階から
弁護人の選任は、逮捕される前の任意捜査の段階から可能です(刑訴法30条1項)。任意同行や任意の取調べの最中でも、取調べを中断して退去し、弁護士に連絡を取ることができます。もっとも、弁護士が取調べに立ち会うことが当然に認められるわけではありません。任意の取調べで嫌疑が固まった後に、逮捕状が執行されることもありますので、早い段階で弁護士に相談することが考えられます。
関連用語
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この記事の担当弁護士: 尾中 翔(愛知県弁護士会 / 弁護士法人中部法律事務所) → 当事務所の弁護士紹介はこちら
※本記事の条文・手続の記載は、2026年7月時点で施行されている法令に基づきます。個別の事案については弁護士にご相談ください。