領置(りょうち)
【定義】
領置とは、遺留された物または任意に提出された物を取得する処分です。
【解説】
遺留とは、所有者や所持者がその占有を放棄している状態のことです。
任意提出は所有者・所持者・保管者が捜査機関や裁判所に対して自分の意思で差し出すことです。
いずれも取得の段階では個人の意思を制圧しないため任意処分の側面を持ちますが、いったん領置されれば差押えと同じ効果が生じ、留置の状態が強制的に継続されるため、強制処分の側面も持ちます。
ただ、性質上、捜索の必要性がなく、プライバシー侵害のおそれもないため、令状主義は採用されておらず、捜査機関の判断のみで行うことができます(221条)。また、裁判段階で裁判所が行うこともできます(101条)。
任意提出と領置の組み合わせは、実務上はかなり用いられています。
同じ目的を達成できるならできるだけ任意処分の方法によるべきであるという「任意捜査の原則」(197条)の趣旨からは妥当なことになります。任意提出の際には任意提出書が作成され、その物品について還付を求めるかそれとも所有権を放棄するかについての意思も確認されます。
領置された物品は、差押えの場合と同様、留置の必要がなくなれば還付を受けることができます(123条、222条1項)。
【参考条文】
刑事訴訟法 第101条
被告人その他の者が遺留した物又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。
第123条
第1項 押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付しなければならない。
第2項 押収物は、所有者、所持者、保管者又は差出人の請求により、決定で仮にこれを還付することができる。
第3項 押収物が第110条の2の規定により電磁的記録を移転し、又は移転させた上差し押さえた記録媒体で留置の必要がないものである場合において、差押えを受けた者と当該記録媒体の所有者、所持者又は保管者とが異なるときは、被告事件の終結を待たないで、決定で、当該差押えを受けた者に対し、当該記録媒体を交付し、又は当該電磁的記録の複写を許さなければならない。
第4項 前三項の決定をするについては、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
第197条第1項
捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。
第221条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者その他の者が遺留した物又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。
第222条第1項
第99条第1項、第100条、第102条から第105条まで、第110条から第112条まで、第114条、第115条及び第118条から第124条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第218条、第220条及び前条の規定によつてする押収又は捜索について、第110条、第111条の2、第112条、第114条、第118条、第129条、第131条及び第137条から第140条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第218条又は第220条の規定によつてする検証についてこれを準用する。ただし、司法巡査は、第122条から第124条までに規定する処分をすることができない。
【関連用語】