示談(じだん)
【定義】
刑事事件における示談とは、犯罪の加害者側が被害者と話し合い、謝罪や被害を弁償するなどして、犯罪について許してもらうことです。法律上は和解契約にあたります。
【解説】
(1)示談の方法
示談は被害者との話し合いですから、まず被害者の連絡先がわからなければなりません。
警察官や検察官に示談の希望を伝え被害者への連絡を依頼すると、通常は応じてくれ、被害者の意向を確認した上で被害者の許可があれば連絡先を教えてくれます。
被疑者本人とは連絡を取りたくないが、弁護人とならば良いという意向の被害者もたくさんいらっしゃいます。
また、さらに弁護人が連絡先等を被疑者に対して秘密にするという誓約が有効である場合もあります。
連絡先がわかれば、被害者に連絡を取り、示談の交渉を始めます。最終的には示談書を作成し、被害者の署名捺印をいただきます。被害者の身元を被疑者に対して秘密にするケースでは、もちろん被害者の署名捺印部分は被疑者に見せません。
(2)示談の内容
示談書の条項に通常含まれるのは、被疑者の謝罪、被害弁償(示談金)、被害者の宥恕(ゆうじょ。許すこと)、これをもって以後は互いに何も請求しないという清算条項です。
事案により、告訴の取下げ、被害届の取下げ、被疑者が今後被害者に接近しないという約束、その違約条項などを入れることもあります。
告訴の取下げや被害届の取下げを含む場合、告訴取下書、被害届取下書は別の書面で作成します。示談金の領収書も別に作成することがあります。
(3)示談の効果
起訴前の場合、示談ができれば直ちにその写しを検察官に提出し、不起訴を求める弁護人の意見とともに報告します。
示談金が支払われ、被害者が宥恕の意思を示していることは検察官の起訴裁量に影響を及ぼす重要な情状です。
事案の軽重、初犯か否かにもよりますが、一般的には不起訴となる確率がかなり上がるといえます。
名誉毀損罪、器物損壊罪などの親告罪で、示談に伴って告訴取下げが得られた場合、告訴は起訴の条件ですから必ず不起訴となります。
起訴後に示談が成立した場合、示談ができた証拠を法廷に提出し、裁判所に量刑の資料として斟酌してもらいます。
ここでも、示談金の支払いと被害者の宥恕意思は重要な情状となり、一般的には量刑が軽くなる効果があります。
ただ、起訴前の示談で不起訴となるのに比べれば、前科がつくかつかないかの点で大きな差があります。そのため、起訴後の示談金の相場は起訴前の示談金よりは安くなる傾向もあります。
【参考条文】
民法第695条
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
刑事訴訟法第248条
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
【関連用語】
- 起訴(きそ)
- 告訴(こくそ)
- 親告罪(しんこくざい)