任意同行(にんいどうこう)
【定義】
任意同行とは、警察官など捜査官が被疑者に同行を求め、被疑者が任意に応じる形で警察署等へ赴くことです。
【解説】
被疑者を警察署へ連れていくもう一つの方法として逮捕がありますが、逮捕は場合によっては手錠などの有形力を行使し、被疑者の意思を抑圧して行うことができる強制処分です。そこで、逮捕にはあらかじめ逮捕状を必要とするなどの厳格な要件が規定されています。これに対し、任意同行には法律の定めた要件がない代わり、あくまでも被疑者が任意に応じることを前提とし、手錠の使用はもちろんのこと、脅迫等で意思を抑圧すれば違法となります(実質的な逮捕)。ただ、そこまでの強制的手段が用いられていない場合、違法となるかどうかのラインは微妙であり、裁判例では犯罪の嫌疑の程度、抵抗の程度、周囲の状況等の事情に応じて判断されています。
捜査官が同行するのではなく、電話や呼出状で出頭を求め、被疑者がこれに応ずるものは任意出頭といいます。
任意同行や任意出頭に引き続き、しばしば取調べが行われますが、この取調べに受忍義務はなく、いつでも中断を求めたり、退出や帰宅を求めることができます。明確に帰宅の意思を告げたのにそれを阻止されたならば、実質的な逮捕と認められる可能性もあります。
任意の取調べによってある程度嫌疑が固まると逮捕状が執行されるというパターンも多いです。ただ、弁護人の選任は任意捜査の段階から可能であることを覚えておいてください。任意同行・任意取調べ中に弁護人との連絡や面会を求めることもでき、捜査機関がこれを妨害すると違法になります。
【参考条文】
刑事訴訟法第30条第1項
被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。
刑事訴訟法第198条第1項
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
刑事訴訟法第223条
・第1項
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、又はこれに鑑定、通訳若しくは翻訳を嘱託することができる。
・第2項
第198条第1項但書及び第3項乃至第5項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
犯罪捜査規範第99条
捜査は、なるべく任意捜査の方法によつて行わなければならない。
犯罪捜査規範第100条
任意捜査を行うに当り相手方の承諾を求めるについては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
1 承諾を強制し、またはその疑を受けるおそれのある態度もしくは方法をとらないこと。
2 任意性を疑われることのないように、必要な配意をすること。
犯罪捜査規範第102条第1項
捜査のため、被疑者その他の関係者に対して任意出頭を求めるには、電話、呼出状(別記様式第七号)の送付その他適当な方法により、出頭すべき日時、場所、用件その他必要な事項を呼出人に確実に伝達しなければならない。この場合において、被疑者又は重要な参考人の任意出頭については、警察本部長又は警察署長に報告して、その指揮を受けなければならない。
【関連用語】
・逮捕(たいほ)
・弁護人(べんごにん)
・捜査機関(そうさきかん)
・被疑者(ひぎしゃ)
・参考人(さんこうにん)