被害届(ひがいとどけ)
【定義】
被害届とは、被害者が捜査機関に対し犯罪に遭った被害の事実を申告すること、またはその申告をした書面のことです。
【解説】
被害届は、たとえば窃盗ならば盗まれた金品の詳細、傷害ならば体の部位など、被害の客観的事実を明確にする捜査資料として重要であり、刑事裁判で証拠としても用いられるものです。警察官が被害者の話を聴きながら作成し、被害者が署名捺印する形がほとんどです。
被害届は捜査の端緒でもありますので、警察に事件を知らせ、捜査してもらうために提出することもできます。しかし、いたずらや悪用を防ぐため、内容によっては警察側が受理に慎重になることもあります。
告訴との違いは、処罰を求める意思表示が含まれているかどうかです。実際には、被害届に付随する供述の部分に処罰を求める趣旨を記載することも多いですが、それだけで被害届が告訴として取り扱われるわけではありません。
告訴がないと起訴できない親告罪の場合、被害者が告訴を取り下げることで不起訴となりますが、被害届の取下げにはそのような効果がありません。ただし、一度被害届を提出している被害者が、示談ができた等の理由で捜査機関に対して取下げを表明すれば、「宥恕の意思(許す気持ち)あり」として、量刑に影響する可能性のある情状資料となります。
【参考条文】
犯罪捜査規範第61条
・第1項
警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。
・第2項
前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第6号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。