用語集

参考人(さんこうにん)

【定義】

刑事事件の捜査において被疑者・被告人以外の者を参考人といいます。

【解説】

刑事訴訟法223条1項により、捜査機関は被疑者以外の者も取り調べることができるとされています。事件について何らかの情報を持っている一般人が典型ですが、事件と無関係で専門知識を持っている者に見解を提供してもらう場合も含まれます。さらに参考人に対して鑑定、通訳、翻訳を嘱託することもできるとされ、捜査段階の鑑定はこの条文に基づいて行われています。

参考人の取調べは任意処分であり、呼出し等に応じる義務はありませんし、応じた後でもいつでも退去できます。これは身柄を拘束されていない被疑者と同じ扱いです。

一方、被疑者には黙秘権の告知が義務付けられているのに対し(刑事訴訟法198条2項)、参考人には義務付けられていません(同223条2項で準用されない)。黙秘権は自分に不利益な供述を強要されない権利であり、第三者である参考人には性質上必要ないと考えられるためです。

参考人の供述は供述調書に記録し、一定の要件の下で裁判の証拠となります(同321条1項2号、3号)。

なお、重要参考人という用語は、参考人だが被疑者になるかもしれない者を指しています。この場合にも黙秘権告知は義務付けられていませんが、被疑者になるかもしれないということは犯罪の嫌疑がある程度認められるということにほかならず、上述の黙秘権が要求されない根拠に照らして問題がないとはいえません。

【参考条文】

刑事訴訟法第198条

第1項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

第2項 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。

第3項 被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。

第4項 前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。

第5項 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

刑事訴訟法第223条

第1項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、又はこれに鑑定、通訳若しくは翻訳を嘱託することができる。

第2項 第百九十八条第一項但書及び第三項乃至第五項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

刑事訴訟法第321条

第1項 被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。

一 裁判官の面前(第百五十七条の四第一項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異つた供述をしたとき。

二 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異つた供述をしたとき。但し、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。

三 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、且つ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。但し、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。

犯罪捜査規範第177条

第1項 取調べを行つたときは、特に必要がないと認められる場合を除き、被疑者供述調書又は参考人供述調書を作成しなければならない。

第2項 被疑者その他の関係者が、手記、上申書、始末書等の書面を提出した場合においても、必要があると認めるときは、被疑者供述調書又は参考人供述調書を作成しなければならない。

犯罪捜査規範第178条

第2項 参考人供述調書については、捜査上必要な事項を明らかにするとともに、被疑者との関係をも記載しておかなければならない。

【関連用語】

 

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