刑事犯罪集

非現住建造物等放火罪(ひげんじゅうけんぞうぶつとうほうかざい)

非現住建造物等放火罪とは、現に人が住居に使用しておらず、かつ現に人がいない建造物などに放火して焼損した場合に成立する犯罪で、法定刑は他人所有の物について 2年以上の有期拘禁刑 です(刑法第109条)。本ページでは、構成要件、法定刑、他の放火罪との違い、公訴時効を整理します。

1. 非現住建造物等放火罪とは — 全体像と拘禁刑改正

非現住建造物等放火罪は、空き家・倉庫・物置など「人が住んでおらず、現に人もいない建造物等」への放火を処罰する犯罪です。放火の客体(対象)が何かによって、現住建造物等放火罪や建造物等以外放火罪と区別されます。

非現住建造物等放火罪とは、放火して、現に人が住居に使用せず、かつ現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した場合に成立する犯罪をいいます(刑法第109条第1項)。空き家、使われていない倉庫や物置などが典型的な客体です。

令和4年法律第67号により、令和7年6月1日以降の行為には「懲役」に代わる新たな自由刑「拘禁刑」が言い渡されます。施行日前の行為は経過措置により従前どおり「懲役」となるため、判決書の刑種表記が事件により異なります。

2. 非現住建造物等放火罪の法定刑と公訴時効

法定刑は、対象の物が他人の所有か自己の所有かで分かれます。他人所有の場合は2年以上の有期拘禁刑、自己所有の場合は6月以上7年以下の拘禁刑です(自己所有で公共の危険が生じなければ処罰されません)。なお、自己所有の物であっても、差押えを受けていたり、他人に賃貸している等の事情があれば他人所有と同様に扱われます(刑法第115条)。

項目 内容
罪名 非現住建造物等放火罪
法令・条文 刑法第109条
法定刑(他人所有・第1項) 2年以上の有期拘禁刑(経過措置中の事件は懲役)
法定刑(自己所有・第2項) 6月以上7年以下の拘禁刑(公共の危険が生じなければ不罰)
公訴時効 他人所有=10年/自己所有=5年
未遂・予備 他人所有(第1項)は処罰規定あり/自己所有(第2項)はなし
関連する罪名 現住建造物等放火罪、建造物等以外放火罪

有期拘禁刑を選択する場合の上限は、刑法上の加重がなければ原則20年です(刑法第12条)。

公訴時効(起訴できる期限)は犯罪行為が終わった時から進行します。他人所有の物への放火(第1項)は長期が有期拘禁刑の上限である20年に及ぶため公訴時効は10年、自己所有の物への放火(第2項)は長期が7年であるため公訴時効は5年です(刑事訴訟法第250条第2項)。

3. 非現住建造物等放火罪の構成要件

成立には、(1)客体が「現に人が住居に使用せず、かつ現に人がいない建造物等」であること、(2)これを焼損したこと、(3)故意があることが必要です。他人所有か自己所有かで、公共の危険の要否が変わります。

客体(非現住・非現在の建造物等)であること

放火の対象となるのは、現に人が住居として使用しておらず、かつ放火の時点で現に人(犯人自身を除く)がいない建造物、艦船、鉱坑です。空き家や無人の倉庫・物置などが典型例です。人が住居に使用し、又は現に人(犯人自身を除く)がいる建造物等への放火は、より重い現住建造物等放火罪(刑法第108条)の対象となります。

焼損したこと

「焼損」とは、火が放火の媒介物を離れ、客体が独立して燃え続ける状態に達することをいうと一般に解されています。放火行為に着手したものの焼損に至らなかった場合は、他人所有の物(第1項)については未遂罪の問題となります。

故意があること/公共の危険

非現住建造物等放火罪は故意犯です。他人所有の建造物等(第1項)については、公共の危険が現実に発生したことの立証は不要と整理されています。これに対して自己所有の建造物等(第2項)については、公共の危険が生じたことが成立要件であり、公共の危険が生じなければ処罰されません。

4. 他の放火罪との違い・未遂・予備

放火罪は、客体が何か(人がいる建造物か、無人の建造物か、それ以外の物か)によって罪名と法定刑が分かれます。

罪名 条文 主な客体 法定刑
現住建造物等放火罪 刑法第108条 人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等 死刑、無期又は5年以上の拘禁刑
非現住建造物等放火罪 刑法第109条 無人の建造物等 2年以上(他人所有)/6月〜7年(自己所有)
建造物等以外放火罪 刑法第110条 建造物等に当たらない物 1年〜10年(他人所有)/1年以下・罰金(自己所有)

非現住建造物等放火罪のうち他人所有の物(第1項)については、未遂罪(刑法第112条)と予備罪(刑法第113条)を処罰する規定があります。自己所有の物(第2項)については、未遂罪・予備罪の処罰規定はありません。

5. 関連情報・ご相談

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出典・参考


この記事の担当弁護士: 浅田 温哉(愛知県弁護士会 / 弁護士法人中部法律事務所) → 当事務所の弁護士紹介はこちら

最終確認日: 2026年7月

※本記事の条文・施行日の記載は、2026年7月時点で施行されている法令に基づきます。個別の事案については弁護士にご相談ください。

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