建造物等以外放火罪(けんぞうぶつとういがいほうかざい)
建造物等以外放火罪とは、建造物等(刑法第108条、109条に定める建造物等)に当たらない物に放火して焼損し、公共の危険を生じさせた場合に成立する犯罪で、法定刑は他人所有の物について 1年以上10年以下の拘禁刑 です(刑法第110条)。本ページでは、構成要件、法定刑、他の放火罪との違い、公訴時効を整理します。
1. 建造物等以外放火罪とは — 全体像と拘禁刑改正
建造物等以外放火罪は、自動車や門・塀・畳など「建造物等に当たらない物」への放火を処罰する犯罪です。焼損に加えて「公共の危険」が現実に生じたことが成立要件となる点に特徴があります。
建造物等以外放火罪とは、放火して、現住建造物等放火罪(刑法第108条)・非現住建造物等放火罪(刑法第109条)の客体に当たらない物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた場合に成立する犯罪をいいます(刑法第110条第1項)。自動車、門、塀、畳、橋など、刑法第108条、109条に定める建造物に該当しない物が客体となります。なお、家屋に敷かれている状態の畳や、備え付けの建具は「建造物の一部」として現住建造物等放火罪・非現住建造物等放火罪の客体に当たる場合があります。
令和4年法律第67号により、令和7年6月1日以降の行為には「懲役」に代わる新たな自由刑「拘禁刑」が言い渡されます。施行日前の行為は経過措置により従前どおり「懲役」となるため、判決書の刑種表記が事件により異なります。
2. 建造物等以外放火罪の法定刑と公訴時効
法定刑は、対象の物が他人の所有か自己の所有かで分かれます。他人所有の場合は1年以上10年以下の拘禁刑、自己所有の場合は1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金です。なお、自己所有の物であっても、差押えを受けていたり、他人に賃貸している等の事情があれば他人所有と同様に扱われます(刑法第115条)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 罪名 | 建造物等以外放火罪 |
| 法令・条文 | 刑法第110条 |
| 法定刑(他人所有・第1項) | 1年以上10年以下の拘禁刑(経過措置中の事件は懲役) |
| 法定刑(自己所有・第2項) | 1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金 |
| 公訴時効 | 他人所有=7年/自己所有=3年 |
| 未遂・予備 | いずれも処罰規定なし |
| 関連する罪名 | 現住建造物等放火罪、非現住建造物等放火罪、延焼罪 |
公訴時効(起訴できる期限)は犯罪行為が終わった時から進行します。他人所有の物への放火(第1項)は長期が10年の拘禁刑であるため原則として公訴時効は7年、自己所有の物への放火(第2項)は長期が1年の拘禁刑であるため公訴時効は3年です(刑事訴訟法第250条第2項)。
3. 建造物等以外放火罪の構成要件
成立には、(1)客体が「建造物等に当たらない物」であること、(2)これを焼損したこと、(3)焼損によって公共の危険が生じたこと、(4)故意があることが必要です。
客体(建造物等に当たらない物)であること
放火の対象となるのは、現住建造物等放火罪(第108条)・非現住建造物等放火罪(第109条)の客体に当たらない物です。自動車、門、塀、畳、橋などが典型例です。人がいる建造物等や無人の建造物等への放火は、それぞれ現住建造物等放火罪・非現住建造物等放火罪の対象となります。
焼損したこと・公共の危険が生じたこと
「焼損」とは、火が放火の媒介物を離れ、客体が独立して燃え続ける状態に達することをいうと一般に解されています。建造物等以外放火罪では、これに加えて「公共の危険」(不特定又は多数の人の生命・身体・財産に対する危険)が現実に生じたことが成立要件となります。
故意があること
建造物等以外放火罪は故意犯であり、物を焼損することの認識が必要です。もっとも、判例は、焼損の結果として公共の危険が生じることまでの認識は必要でないとの立場をとっているとされています。
4. 他の放火罪との違い・未遂・予備
放火罪は、客体が何か(人がいる建造物か、無人の建造物か、それ以外の物か)によって罪名と法定刑が分かれます。
| 罪名 | 条文 | 主な客体 | 法定刑 |
|---|---|---|---|
| 現住建造物等放火罪 | 刑法第108条 | 人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等 | 死刑、無期又は5年以上の拘禁刑 |
| 非現住建造物等放火罪 | 刑法第109条 | 無人の建造物等 | 2年以上(他人所有)/6月〜7年(自己所有) |
| 建造物等以外放火罪 | 刑法第110条 | 刑法第108条、109条に定める建造物等に当たらない物 | 1年〜10年(他人所有)/1年以下・罰金(自己所有) |
未遂罪を定める刑法第112条は現住建造物等放火罪(第108条)と他人所有の非現住建造物等放火罪(第109条第1項)を、予備罪を定める刑法第113条も同じくこれらを対象としています。建造物等以外放火罪(第110条)は、いずれの対象にも含まれておらず、未遂罪・予備罪の処罰規定はありません。なお、自己所有の物を焼損してさらに他の物に燃え移らせた場合には、延焼罪(刑法第111条)が問題となることがあります。
5. 関連情報・ご相談
関連する放火・失火の罪については刑事犯罪集の各ページで、ご相談の受付についてはご相談窓口でご案内しています。
【関連する刑事犯罪集】
- 非現住建造物等放火罪(ひげんじゅうけんぞうぶつとうほうかざい) — 無人の建造物等への放火
- 延焼罪(えんしょうざい) — 自己所有物への放火から他の物に延焼した場合の罪
- 失火罪(しっかざい) — 過失によって出火させた場合の罪
放火事件で逮捕・勾留された方やそのご家族で対応にお困りの方は、当事務所にご相談ください。ご相談の受付方法・当日の流れは、ご相談の流れおよび Web 相談予約フォーム でご案内しています。
出典・参考
この記事の担当弁護士: 本田 昭夫(愛知県弁護士会 / 弁護士法人中部法律事務所) → 当事務所の弁護士紹介はこちら
最終確認日: 2026年7月
※本記事の条文・施行日の記載は、2026年7月時点で施行されている法令に基づきます。個別の事案については弁護士にご相談ください。