刑事犯罪集

延焼罪(えんしょうざい)

延焼罪とは、自己所有の物に放火して焼損し、その火が予期しなかった他の物に燃え移って(延焼して)焼損させた場合に成立する犯罪で、法定刑は延焼先の物により 3月以上10年以下の拘禁刑 又は 3年以下の拘禁刑 です(刑法第111条)。本ページでは、構成要件、法定刑、他の放火罪との関係、公訴時効を整理します。

1. 延焼罪とは — 全体像と拘禁刑改正

延焼罪は、自己所有の物への放火(比較的軽く処罰される類型)から火が広がり、予期していなかった別の物に燃え移ってしまった場合を、重い刑で処罰する犯罪です。延焼した結果について故意がない場合に成立します。

延焼罪とは、自己所有の非現住建造物等(刑法第109条第2項)又は自己所有の建造物等以外の物(刑法第110条第2項)に放火する罪を犯し、その結果、他の物に延焼させた場合に成立する犯罪をいいます(刑法第111条)。延焼先の物が何かによって、法定刑が二つに分かれます。

令和4年法律第67号により、令和7年6月1日以降の行為には「懲役」に代わる新たな自由刑「拘禁刑」が言い渡されます。施行日前の行為は経過措置により従前どおり「懲役」となるため、判決書の刑種表記が事件により異なります。

2. 延焼罪の法定刑と公訴時効

法定刑は、延焼した先の物が何か(人がいる建造物等・無人の建造物等か、それ以外の物か)によって分かれます。

項目 内容
罪名 延焼罪
法令・条文 刑法第111条
法定刑(第1項) 3月以上10年以下の拘禁刑(経過措置中の事件は懲役)
法定刑(第2項) 3年以下の拘禁刑(経過措置中の事件は懲役)
公訴時効 第1項=7年/第2項=3年
関連する罪名 非現住建造物等放火罪、建造物等以外放火罪、失火罪

第1項は、自己所有の非現住建造物等(第109条第2項)又は自己所有の建造物等以外の物(第110条第2項)への放火から、現住建造物等(第108条)又は他人所有の非現住建造物等(第109条第1項)に延焼させた場合です。第2項は、自己所有の建造物等以外の物(第110条第2項)への放火から、他人所有の建造物等以外の物(第110条第1項)に延焼させた場合です。

公訴時効(起訴できる期限)は犯罪行為が終わった時から進行します。第1項は長期が10年の拘禁刑であるため原則として公訴時効は7年、第2項は長期が3年の拘禁刑であるため原則として公訴時効は3年です(刑事訴訟法第250条第2項)。

3. 延焼罪の構成要件 — 「延焼」の意味

延焼罪は、自己所有物への放火という前提となる犯罪があり、そこから予期しない物に火が燃え移った場合に成立する結果的加重犯です。延焼の結果について故意がないことが要件です。

前提となる放火があること

延焼罪は、自己所有の非現住建造物等(第109条第2項)又は自己所有の建造物等以外の物(第110条第2項)への放火を前提とします。いずれも自己の所有物への放火であり、それ自体は比較的軽く処罰される類型です。

「延焼」させたこと

「延焼」とは、犯人が予期していなかった物に火が燃え移り、これを焼損することをいいます。前提となる放火の対象を超えて火が広がり、より重く保護される物(人がいる建造物等など)に及んだ点をとらえて、重く処罰するものです。

延焼の結果について故意がないこと

延焼罪は、延焼した結果について故意がない場合にのみ成立します。延焼先の物を焼損することについて故意がある場合には、延焼罪ではなく、その物に対応する放火罪(現住建造物等放火罪・非現住建造物等放火罪・建造物等以外放火罪)が成立します。

4. 他の放火の罪との関係

延焼罪は、放火の罪の体系のなかで、自己所有物への放火から結果が拡大した場合を補う位置づけの犯罪です。

罪名 条文 概要
非現住建造物等放火罪 刑法第109条 無人の建造物等への放火。第2項(自己所有)が延焼罪の前提となり得る
建造物等以外放火罪 刑法第110条 建造物等に当たらない物への放火。第2項(自己所有)が延焼罪の前提となり得る
失火罪 刑法第116条 過失によって出火させた場合の罪

延焼先の物への放火について故意が認められる場合は、その物に対応する放火罪が成立し、延焼罪は問題となりません。延焼罪は、あくまで延焼の結果について故意がない場合を処罰する犯罪です。

5. 関連情報・ご相談

関連する放火・失火の罪については刑事犯罪集の各ページで、ご相談の受付についてはご相談窓口でご案内しています。

【関連する刑事犯罪集】

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出典・参考


この記事の担当弁護士: 尾中 翔(愛知県弁護士会 / 弁護士法人中部法律事務所) → 当事務所の弁護士紹介はこちら

最終確認日: 2026年7月

※本記事の条文・施行日の記載は、2026年7月時点で施行されている法令に基づきます。個別の事案については弁護士にご相談ください。

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