現住建造物等放火罪(げんじゅうけんぞうぶつとうほうかざい)
現住建造物等放火罪とは、放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等を焼損する犯罪で、法定刑は 死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑 です(刑法第108条)。放火の罪のなかでも重い法定刑が定められた類型です。
1. 現住建造物等放火罪とは
現住建造物等放火罪の対象は、「現に人が住居に使用し、又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」です(刑法第108条)。犯行当時にたまたま人が不在であっても、日常生活の場として使用されていれば「現に人が住居に使用する建造物」に当たると解されています。
「焼損」とは、火が放火の媒介物を離れ、目的物が独立して燃焼を継続する状態に達することをいうと解されています(独立燃焼説)。この状態に達すれば既遂となり、達しなければ未遂となります(刑法第112条)。
成立には故意が必要で、故意なく過失により焼損させた場合は、現住建造物等放火罪ではなく失火罪(刑法第116条、50万円以下の罰金)の問題となります。
令和4年法律第67号により、令和7年6月1日以降の行為には「懲役」に代わる新たな自由刑「拘禁刑」が言い渡されます。施行日前の行為は経過措置により従前どおり「懲役」となるため、判決書の刑種表記が事件により異なります。
2. 法定刑・公訴時効と関連する罪
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 罪名 | 現住建造物等放火罪 |
| 法令・条文 | 刑法第108条 |
| 法定刑 | 死刑/無期拘禁刑/5年以上の有期拘禁刑(経過措置中の事件は懲役) |
| 未遂 | 処罰される(刑法第112条) |
| 予備 | 処罰される(刑法第113条、情状により免除可) |
| 公訴時効 | 25年(刑事訴訟法第250条第2項第1号) |
現住建造物等放火罪は死刑に当たる罪であるため、公訴時効は25年です(刑事訴訟法第250条第2項第1号、ただし、放火の結果により人が死亡した場合は公訴時効なし)。放火の罪は、対象となる建造物等の性質によって次のように区別され、法定刑が異なります。
- 現住建造物等放火罪(刑法第108条): 現に人が住居に使用し、又は現に人がいる建造物等。
- 非現住建造物等放火罪(刑法第109条): 人の住居に使用されておらず、かつ現に人もいない建造物等。ただし、犯人が所有する建造物等の場合は公共の危険が生じなければ罰せられない。
- 建造物等以外放火罪(刑法第110条): 建造物等以外の物。公共の危険を生じさせたことが要件となる。
対象の建造物に「現に人が住居に使用し又は現に人がいる」といえるか、放火行為があったか、独立して燃焼を継続する状態(焼損)に達したか、といった点が、成立や既遂・未遂を分ける重要な事実になります。
3. 放火事件でお困りの方へ
現住建造物等放火の疑いで捜査を受けている、ご家族が逮捕されたなど、放火事件でお困りの方は当事務所にご相談ください。ご相談の受付方法・当日の流れは、ご相談の流れおよび Web 相談予約フォーム でご案内しています。
出典・参考
- 刑法(e-Gov 法令検索)
- 刑事訴訟法(e-Gov 法令検索)
- 拘禁刑の創設について(法務省)
- 放火全体(刑法第108〜110条を含む区分)の認知件数は令和5年で766件です(令和6年版犯罪白書)。現住建造物等放火罪(第108条)単独の件数ではありません。
この記事の担当弁護士: 尾中 翔(愛知県弁護士会 / 弁護士法人中部法律事務所) → 当事務所の弁護士紹介はこちら
最終確認日: 2026年7月
※本記事の条文・施行日の記載は、2026年7月時点で施行されている法令に基づきます。個別の事案については弁護士にご相談ください。