刑事犯罪集

暴行罪(ぼうこうざい)

暴行罪とは、人に暴行を加えたものの傷害の結果が生じなかった場合に成立する犯罪で、法定刑は 2年以下の拘禁刑 又は30万円以下の罰金、拘留若しくは科料です(刑法第208条)。相手にケガ(傷害)が生じた場合は、より重い傷害罪に切り替わります。本ページでは、構成要件、傷害罪との違い、拘禁刑改正のポイントを、3分で読める形に整理します。

1. 暴行罪とは — 全体像と拘禁刑改正

暴行罪は、人の身体への有形力(物理的な力)の行使を処罰する身体犯です。暴行の結果として傷害が生じたと認められる場合は傷害罪、生じなければ暴行罪となります。

暴行罪とは、人の身体に向けて暴行(有形力の行使)を加えたものの、傷害の結果が生じなかった場合に成立する犯罪をいいます(刑法第208条)。条文上の「暴行」は、相手の身体に向けられた物理力の行使を広く含むと整理されています。

令和4年法律第67号により、令和7年6月1日以降の行為には「懲役」に代わる新たな自由刑「拘禁刑」が言い渡されます。施行日前の行為は経過措置により従前どおり「懲役」となるため、判決書の刑種表記が事件により異なります。

2. 暴行罪の法定刑と公訴時効

法定刑は拘禁刑・罰金・拘留・科料の選択刑で、身体犯のなかでは軽い類型に位置づけられます。公訴時効(起訴できる期限)は3年です。

項目 内容
罪名 暴行罪
法令・条文 刑法第208条
法定刑 2年以下の拘禁刑(経過措置中の事件は懲役)、30万円以下の罰金、拘留又は科料
公訴時効 3年(刑事訴訟法第250条第2項第6号
親告罪 該当しない(被害者の告訴がなくても起訴可能)
関連する罪名 傷害罪(傷害の結果が生じた場合に切替)

公訴時効は犯罪行為が終わった時から進行します。事後に傷病が判明して罪名が傷害罪に切り替わると、公訴時効は 10年 に伸長されます。罰金・拘留・科料が選択刑にあるため、検察官が罰金相当と判断した事案では、略式手続(書面審理で罰金等を言い渡す簡易な手続)が選択されることがあります。

3. 暴行罪の構成要件 — 4つの要件

暴行罪の成立には、(1)暴行(有形力の行使)、(2)人の身体に対するもの、(3)故意、(4)傷害の結果が生じないこと、の4要件が必要です。

暴行(有形力の行使)

「暴行」とは、相手の身体に向けて有形力(物理的な力)を行使することです。殴る・蹴る・突き飛ばす・髪を引っ張るといった直接の打撃が典型ですが、判例上は 身体への接触を伴わない行為 も暴行に該当し得るとされ、次のような行為態様で暴行罪の成立を認めた裁判例があるとされています。

  • 石を投げつけて命中しない
  • 塩を浴びせる
  • 太鼓を耳元で打ち鳴らす

また、相手の至近距離で大声を浴びせる行為も、その態様によっては暴行に当たり得ると解されています。

人の身体に対するものであること

暴行は「人の身体」に向けられたものでなければならず、物のみに対する有形力の行使(器物損壊罪の対象)は暴行罪に該当しません。もっとも、所持品を強く引き抜く・蹴り飛ばす行為が、相手の身体に有形力を及ぼすと評価される場合は暴行に該当し得ます。

故意があること

暴行罪は故意犯で、「相手の身体に有形力を行使すること」の認識・認容が必要です。過失で人にぶつかったような事案は暴行罪では処罰されません(過失で傷害の結果が生じた場合は過失傷害罪(刑法第209条)の対象です)。

傷害の結果が生じないこと

暴行の結果として相手に傷害が生じたと認められる場合(暴行と傷害との間の因果関係が認められる場合)は傷害罪、生じなければ暴行罪です。なお、現行刑法に 暴行罪の未遂を処罰する規定はありません

4. 傷害罪との違い

暴行罪と傷害罪は、結果(傷害が生じたか否か)で区別されます。傷害が生じれば、より重い傷害罪になります。

罪名 条文 主な区別ポイント 法定刑
暴行罪 刑法第208条 暴行したが傷害に至らない 2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留又は科料
傷害罪 刑法第204条 暴行の結果として傷害が生じた 15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金

両罪を分けるのは、結果として傷害(ケガ)が生じたかどうかです。捜査機関は被害結果の有無等を踏まえて起訴罪名を選択するため、診断書の事後提出によって罪名が傷害罪へ切り替わる可能性があり、初動段階での事実整理が重要です。なお、数人共同しての暴行行為は、暴力行為等処罰に関する法律第1条により3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に加重される類型もあります。

5. いまお困りの方へ — 弁護方針・関連情報

具体的な弁護方針は同じ罪名の弁護方針ページで、いまのお困りごとに応じた対応はニーズ別ページでご案内しています。

暴行事件の具体的な弁護方針・示談交渉の進め方・処分の見通しは、以下のページで詳しくご案内しています。

暴行罪の弁護方針|示談・不起訴・無罪を目指す

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【関連する刑事犯罪集】
傷害罪(しょうがいざい) — 暴行から傷害の結果が生じた場合の身体犯
恐喝(きょうかつ) — 暴行・脅迫が手段となる関連罪名

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出典・参考


この記事の担当弁護士: 浅田 温哉(愛知県弁護士会 / 弁護士法人中部法律事務所)
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最終確認日: 2026年7月

※本記事の条文・施行日の記載は、2026年7月時点で施行されている法令に基づきます。個別の事案については弁護士にご相談ください。

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