勾留(こうりゅう)
【定義】
勾留とは、被疑者または被告人の身柄を拘束する処分です。
【解説】
逮捕に引き続き、逃亡や罪証隠滅のおそれがあると考えられるときは、検察官が裁判官に対して勾留請求をします。裁判官は被疑者の陳述を聞いた上で、勾留状を発します。
勾留と逮捕の最も大きな違いはその長さであり、1度目の勾留期間は10日間、さらに検察官の請求により10日間の延長が認められる可能性があります。逮捕と合計すると、起訴までに最大23日間の身柄拘束が続くことになります。
起訴後は被告人勾留に移行し、勾留期間は起訴から2ヶ月で、さらに1ヶ月ごとに更新されます。ただし、起訴後には保釈が認められる余地が出てきます。
被疑者・被告人にとって、勾留は社会生活に与える影響が大変大きく、外界と分断されることで精神的負担も生じます。そこで、弁護活動においても勾留からの早期解放が重要な目標の一つとなります。
勾留から解放される方法には次のようなものがあります。
①検察官に働きかけて、勾留請求や勾留延長請求をしないように判断してもらう。
②裁判官に働きかけて、勾留請求却下や勾留延長請求却下の裁判をしてもらう。
③勾留の理由や必要性が消滅したことを主張して、勾留取消請求を行う。
④入院や家族の事故等特別な事情があることを主張して、勾留の執行停止を申し立てる。
④勾留の裁判を不服として、裁判所に準抗告を申し立てる。
⑤起訴後の場合、保釈請求を行う。
勾留理由の存在を争ったり、違法性を検討するための手段として、勾留理由開示という手続もあります。
被疑者段階(起訴前)における勾留の場所は、警察署の留置場であることがほとんどです。起訴後は、拘置所に移送されます。
家族・友人等の面会は警察署や拘置所ごとにルールが異なります。時間制限、人数制限、差入れ可能物品等は問い合わせれば教えてもらえます。
弁護人または弁護人になろうとする弁護士は、時間制限や立会いのない接見が認められます。ご家族からの依頼で、本人から事情を聴き、選任意思を確認するために接見に行くこともあります。
【参考条文】
刑事訴訟法第60条
・第1項
裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
1 被告人が定まった住居を有しないとき。
2 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
・第2項
勾留の期間は、公訴の提起があった日から2箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、1箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第89条第1号、第3号、第4号又は第6号にあたる場合を除いては、更新は、1回に限るものとする。
・第3項 (略)
刑事訴訟法第61条
被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。
刑事訴訟法第62条
被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。
刑事訴訟法第82条第1項
勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
刑事訴訟法第87条第1項
勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以って勾留を取り消さなければならない。
刑事訴訟法第95条
裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。
刑事訴訟法第205条第1項
検察官は、第203条の規定により送致された被疑者を受け取ったときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
刑事訴訟法第207条1項
前3条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
刑事訴訟法第208条第1項
前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から10日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
第2項 裁判官は、やむをえない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて10日を超えることができない。
刑事訴訟法第429条第1項
判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
1 (略)
2 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
3〜5 (略)
【関連用語】