不起訴(ふきそ)
【定義】
不起訴とは、検察官が事件を起訴しないと決める処分のことです。
【解説】
(1)不起訴の種類
検察官は、微罪処分などの一部の例外を除き、すべての刑事事件について起訴するかどうかの判断をしています。
起訴しないという判断をした時に不起訴となりますが、不起訴とする理由には以下の種類があります。①〜④は起訴ができない場合、⑤は起訴できるけどしない場合といえます。
①訴訟条件を欠く場合。たとえば、公訴時効が成立した、親告罪の告訴が取り下げられたなどです。
②罪とならない。たとえば、盗品だと思われた物が被疑者自身の物だったなど、事実が犯罪を構成しないことや、心神喪失などで犯罪が成立しないことが証拠上明らかな場合です。
③嫌疑なしまたは嫌疑不十分。証拠が足りない場合や全くない場合と、被疑者が犯人ではないことが明らかになった場合です。
④刑の免除の事由がある場合。たとえば、窃盗の事実は認められるが被害者が同居の家族である場合(刑法244条1項により刑が免除される)などです。
⑤訴追の必要がないと考えられる場合。いわゆる起訴猶予です。起訴猶予については別項で解説します。
平成27年版の犯罪白書によれば、平成26年の全国の検察官による事件処理件数約124万件中不起訴は約77万件で、そのうち⑤起訴猶予が約70万件、その他の不起訴が約7万件です。
(2)不起訴の効果
事件が不起訴処分となった場合、身柄事件であれば直ちに釈放されます(刑事訴訟法208条)。在宅事件の場合、問い合わせないと不起訴が知らされない場合もあります(被疑者から請求があれば速やかに告知されますが、それ以外の場合に告知の義務はありません。刑事訴訟法259条)。告訴した人がいる場合には不起訴となったことを必ず通知し、請求があればその理由も告げることとされていますが、被害届を出しただけの人についてはこのような制度はありません(刑事訴訟法260条、261条)。
不起訴は検察官の「終局処分」であり、事件が一応それで終結するものではありますが、実はそれで一切その事件について罪に問われる可能性がなくなったというものではありません。検察官は不起訴処分をした後に事件を「再起」することができ、その場合新しく警察から送検された事件を受け取ったのと同じように扱うことができ、公訴を提起することも可能です。数としてはかなり少ないですが、そういうこともありうるので注意が必要です。
また、検察官の処分の当否を審査する検察審査会という制度があり、被害者や告訴人らの申立てまたは職権に基づき、不起訴処分について審査が行われることがあります。審査により起訴相当や不起訴不当と議決されると、検察官が再度処分を検討し、その結果起訴される可能性もあります。
【参考条文】
刑事訴訟法第248条
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
刑事訴訟法第259条
検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。
刑事訴訟法第260条
検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。
刑事訴訟法第261条
検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。
【関連用語】
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