微罪処分(びざいしょぶん)
【定義】
微罪処分とは、あらかじめ検察官が指定する一定の軽微な犯罪について、事件を検察官に送付せず、警察限りで終結させる処分のことです。
【解説】
警察が扱った事件は、最終的にすべて検察官に送致(送検)しなければならないというのが原則で、全件送致主義といいますが、微罪処分はこの全件送致主義の例外です(刑事訴訟法246条但書)。
微罪処分の対象になる事件は地方検察庁ごとに、検察官から警察に対する一般的指揮(刑事訴訟法193条)の形で指定されています。そしてその内容は全国的にほぼ共通しており、次のようなものです。
①被害額がわずかで、犯情軽微で、被害回復が行われ、被害者が処罰を希望せず、被疑者に前科前歴がなく、素行不良でもなく、偶発的犯行で、再犯のおそれがない窃盗、詐欺、横領およびこれらに準ずる盗品等に関する事件
②賭けた物が極めてわずかで、犯情軽微で、共犯者の全員に再犯のおそれがない初犯者の賭博事件
③その他検事正が特に指示した特定犯罪の事件
微罪処分の対象事件については「送致しないことができる」とされ(犯罪捜査規範198条)、送致しない場合には被疑者に訓戒を加え、親などの監督者にも注意を与えて請書を出させるなどの処置を取ります(同200条)。微罪処分にした事件については、月ごとに取りまとめて検察官に事後報告すればよいことになっています(同199条)。
刑事事件の被疑者となった人にとっては、微罪処分が最も不利益の少ない結末と言えます。微罪処分となる可能性のあるケースでは、弁護士を通じた示談や警察との交渉などの活動に力を尽くすことをお勧めします。
【参考条文】
刑事訴訟法第246条
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
犯罪捜査規範第198条
捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
犯罪捜査規範第199条
前条の規定により送致しない事件については、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨を一月ごとに一括して、微罪処分事件報告書(別記様式第十九号)により検察官に報告しなければならない。
犯罪捜査規範第200条
第百九十八条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。
一 被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。
二 親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
三 被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。
【関連用語】
微罪処分の可能性の有無、可能性を高めるためにできることなど、微罪処分に関するご相談は当事務所までお気軽にお問い合わせください。