被告人(ひこくにん)
【定義】
被告人とは、公訴を提起(起訴)された人のことです。
【解説】
刑事裁判では、公訴を提起した検察官と提起された被告人とが対立する当事者となり、裁判所が公平な立場で判断を下します。判断の対象は、簡単にいうと検察官の主張が正しいかどうかということです。検察官が起訴状に記載した罪を本当に被告人が犯したのかどうかを証拠に基づいて認定し(事実認定)、その上で、法定刑の中から妥当な刑を量定します(量刑)。民事裁判と異なり、証拠を提出して事実を立証する責任を負っているのは常に検察官の側です。検察官が有罪を立証できなければ無罪になるのです(刑事訴訟法336条)。もっとも、検察官としてはそれを前提に、十分証拠を揃えられた事件を選別して起訴するので、刑事裁判の有罪率は非常に高くなっています。
検察官の有罪立証に対して、被告人の側は防御として、反論したり証拠を提出することができます。ただ、法律のプロである検察官に対して、素人たる被告人はあまりにも非力です。そこで弁護人の助けが重要な権利として保障されているのです。
被告人という呼び方は、第一審、控訴審、上告審通じて変わりません。
被疑者から被告人になった場合、身柄拘束中であれば保釈請求が可能になるという大きな変化があります。身柄拘束が続く場合には、多くのケースで警察署の留置場から拘置所へ移送されます。
【参考条文】
刑事訴訟法第256条
第1項 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
第2項 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
二 公訴事実
三 罪名
第3項 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
第4項 罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。
第5項 数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。
第6項 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。
刑事訴訟法第336条
被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。
【関連用語】
- 起訴(きそ)
- 事実認定(じじつにんてい)
- 量刑(りょうけい)
- 弁護人(べんごにん)
- 保釈(ほしゃく)
- 留置場(りゅうちじょう)
- 拘置所(こうちしょ)