押収(おうしゅう)
【定義】
押収の定義は、憲法と刑事訴訟法とで異なります。
①憲法上の押収:差押えのことです。
②刑事訴訟法上の押収:物を取得する処分のことで、差押え、領置、提出命令がこれに含まれます。
【解説】
他人の占有している物についてその占有を排除して取得する処分を差押えといい、遺留や任意提出により占有を離れた物を取得する処分を領置といいます。
領置は取得の段階では任意性があるので任意処分に分類されますが、領置した物は自由に返してもらえるわけでなく、一定の場合に還付を受けられるだけなので強制の側面もあります。
このうち、特に財産権に対する強い制約となる差押えについて、憲法35条が「何人も令状によらない限り捜索・押収を受けない」という趣旨を規定して、令状主義による限界を画しています。
なお、裁判所の提出命令(刑事訴訟法99条3項)も物を取得する処分なので刑事訴訟法上の押収の一種ですが、裁判段階で裁判所のみが行える処分であり、捜査機関が行うことはできません。
差押え、領置、提出命令の具体的な要件等については、それぞれの項を参照してください。
【参考条文】
憲法第35条
第1項 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
第2項 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
刑事訴訟法 第99条第3項
裁判所は、差し押さえるべき物を指定し、所有者、所持者又は保管者にその物の提出を命ずることができる。
第218条第1項
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
第221条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者その他の者が遺留した者又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。
【関連用語】