盗撮・のぞき(撮影罪・迷惑防止条例違反)
盗撮のうち、性的な姿態(下着・身体の性的な部位・わいせつな行為等)を「撮影」する行為は、原則として 性的姿態等撮影罪 として処罰され、法定刑は 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金 です(性的姿態等撮影処罰法)。撮影を伴わないのぞき見などは、迷惑行為防止条例違反や軽犯罪法違反となります。本ページでは、愛知県の条例を前提に、撮影罪・条例・軽犯罪法・住居侵入罪の適用の切り分けを整理します。具体的な弁護方針・ご相談は 盗撮事件の弁護方針ページ でご案内しています。
1. 盗撮・のぞきを規制する法令 — 全体像と法改正
従来、盗撮・のぞきは主に迷惑行為防止条例や軽犯罪法で処罰されてきましたが、令和5年に「性的姿態等撮影罪」が新設され、撮影を伴う盗撮は原則としてこの罪で処断されるようになりました。
盗撮・のぞきについては、①性的姿態等撮影罪(性的姿態等撮影処罰法)、②迷惑行為防止条例違反、③軽犯罪法違反、④住居侵入罪・建造物侵入罪(付随する場合)といった複数の法令が関係します。
令和5年(2023年)7月13日に 性的姿態等撮影罪(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律、令和5年法律第67号)が施行され、性的な姿態を「撮影」する行為が、全国一律の特別法によって処罰されることになりました。これにより、撮影を伴う盗撮は、原則として迷惑行為防止条例違反ではなく性的姿態等撮影罪で扱われます。
令和4年法律第67号による「拘禁刑」への一本化(令和7年6月1日施行)を受け、性的姿態等撮影処罰法や愛知県迷惑行為防止条例の罰則も「懲役」から「拘禁刑」に改められました。施行日前の行為は経過措置により従前どおり「懲役」で処断されます。
2. 盗撮・のぞきの法定刑と公訴時効
撮影を伴う盗撮は性的姿態等撮影罪(3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金)、撮影を伴わないのぞき見等は迷惑行為防止条例違反(愛知県では1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)や軽犯罪法違反(拘留又は科料)が問題になります。
| 罪名 | 根拠 | 法定刑 | 公訴時効 |
|---|---|---|---|
| 性的姿態等撮影罪 | 性的姿態等撮影処罰法 | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(経過措置中の事件は懲役) | 3年 |
| 迷惑行為防止条例違反(愛知県) | 愛知県迷惑行為防止条例 第2条の2・第15条 | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(常習は2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金) | 3年 |
| 軽犯罪法違反(のぞき) | 軽犯罪法第1条第23号 | 拘留又は科料 | 1年 |
| 住居侵入罪・建造物侵入罪 | 刑法第130条 | 3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金 | 3年 |
なお、性的姿態等撮影罪は未遂も処罰されます。また、撮影した画像等を不特定多数に提供したり公然と陳列したりした場合には、より重い類型(5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれらの併科)が定められています。公訴時効は、いずれも犯罪行為が終わった時から進行します(刑事訴訟法第250条)。
3. 愛知県迷惑行為防止条例による規制(撮影を伴わないのぞき見等)
愛知県では、平成31年(2019年)の改正で規制される場所・行為が拡大され、罰則も引き上げられました。学校の教室やトイレ・更衣室など、従来は対象になりにくかった場所も規制されています。
愛知県迷惑行為防止条例第2条の2は、①公共の場所・公共の乗物(第1項)、②不特定又は多数の者が利用できる場所・乗物(第2項)、③住居・浴場・便所・更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所(第3項)を対象に、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、身体・下着ののぞき見や撮影、そのための写真機等の設置・向ける行為などを禁じています。
平成31年の改正では、学校の教室・会社のオフィス・タクシー・カラオケボックスなどの「不特定又は多数の者が利用できる場所」や、住居・ホテル・更衣室などが規制対象に加えられ、あわせて罰則が改正前の「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(常習は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)」から引き上げられました。
4. 適用の切り分け — 撮影罪・条例・軽犯罪法・住居侵入罪
「撮影」を伴うか、のぞき「見」にとどまるか、他人の住居等に「侵入」したか、によって成立する罪が変わります。複数の罪が同時に問題になることもあります。
- 撮影を伴う盗撮:原則として性的姿態等撮影罪(3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金)で処断されます。従来「刑法に盗撮罪はない」と説明されることがありましたが、撮影罪の新設後は、撮影を伴う盗撮はこの特別法で処罰されるのが基本です。
- 撮影を伴わないのぞき見:迷惑行為防止条例違反(第2条の2)が問題になります。カメラ等を使わず目視でのぞき見をし、被害者側の羞恥・不安の要件を満たさないような場合には、軽犯罪法第1条第23号(拘留又は科料)が受け皿となります。
- 他人の住居・建物への侵入を伴う場合:盗撮・のぞきの目的で住居・浴場・トイレ・更衣室などに立ち入れば、別途、住居侵入罪・建造物侵入罪(刑法第130条)が成立し得ます。この場合、撮影・のぞきの罪と住居侵入等の罪は、事実関係により牽連犯(けんれんはん)として処理される場合があり、そのときは刑法第54条第1項により重い方の刑で処断されます。
どの罪名で起訴するかは、検察官が捜査結果に基づいて総合的に判断します。
5. いまお困りの方へ — 弁護方針・関連情報
具体的な弁護方針は同じ罪名の弁護方針ページで、いまのお困りごとに応じた対応はニーズ別ページでご案内しています。
盗撮事件の具体的な弁護方針・示談交渉の進め方・処分の見通しは、以下のページで詳しくご案内しています。
【いまのお困りごとから探す】
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【関連する刑事犯罪集】
– 痴漢(迷惑行為防止条例違反) — 身体に触れる場合の関連類型
– 住居侵入罪・建造物侵入罪 — 盗撮の目的で立ち入った場合に併立し得る関連罪名
ご相談の受付方法・当日の流れは、ご相談の流れおよび Web 相談予約フォーム でご案内しています。
出典・参考
- 性的姿態等撮影処罰法(e-Gov 法令検索)
- 軽犯罪法(e-Gov 法令検索)
- 刑法(e-Gov 法令検索)
- 愛知県迷惑行為防止条例(愛知県例規集・第2条の2/第15条)
- 拘禁刑の創設について(法務省)
この記事の担当弁護士: 尾中 翔(愛知県弁護士会 / 弁護士法人中部法律事務所)
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最終確認日: 2026年7月
※本記事の条文・施行日の記載は、2026年7月時点で施行されている法令に基づきます。個別の事案については弁護士にご相談ください。