刑事犯罪集

殺人罪(単純殺人罪)(さつじんざい・たんじゅんさつじんざい)

殺人罪とは、人を殺した場合に成立する犯罪で、法定刑は 死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑 です(刑法第199条)。本ページでは、構成要件、法定刑、未遂・予備などの関連する罪、公訴時効を整理します。

1. 殺人罪とは — 全体像と拘禁刑改正

殺人罪は、他人の生命を、その意思に反して侵害する故意犯です。故意(殺意)がない場合は殺人罪ではなく、過失致死罪や傷害致死罪などが問題になります。

殺人罪とは、人を殺した場合に成立する犯罪をいいます(刑法第199条)。対象となるのは「生きている他人」であり、胎児、亡くなった方(死体)、自分自身(自殺)、人以外の生命は殺人罪の対象ではありません。

令和4年法律第67号により、令和7年6月1日以降の行為には「懲役」に代わる新たな自由刑「拘禁刑」が言い渡されます。施行日前の行為は経過措置により従前どおり「懲役」となるため、判決書の刑種表記が事件により異なります。

2. 殺人罪の法定刑と公訴時効

法定刑は死刑・無期拘禁刑・5年以上の有期拘禁刑の選択刑で、刑法犯のなかでもっとも重い類型の一つです。人を死亡させた殺人罪の公訴時効は、平成22年の法改正により廃止されています。

項目 内容
罪名 殺人罪
法令・条文 刑法第199条
法定刑 死刑、無期拘禁刑、又は5年以上の有期拘禁刑(経過措置中の事件は懲役)
公訴時効 なし(平成22年改正で廃止)
親告罪 該当しない(被害者側の告訴がなくても起訴可能)
関連する罪名 殺人未遂罪、殺人予備罪、同意殺人罪、過失致死罪、傷害致死罪

有期拘禁刑を選択する場合の上限は、刑法上の加重がなければ原則20年です(刑法第12条)。

公訴時効について、平成22年4月27日に施行された「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(平成22年法律第26号)により、人を死亡させた罪であって死刑に当たるもの(殺人罪など)の公訴時効は廃止されました。この廃止は、同改正の施行時にまだ公訴時効が完成していなかった事件について適用されるものであり、施行前に既に公訴時効が完成していた事件について時効を復活させるものではありません。この経過措置に該当する殺人罪については、その後長い年月が経過しても起訴できる期限はありません。

3. 殺人罪の構成要件

殺人罪の成立には、(1)「生きている他人」という客体、(2)人を死亡させる行為、(3)死亡という結果と因果関係、(4)故意(殺意)が必要です。

客体(生きている他人)であること

殺人罪の客体は「生きている他人」です。人の始まり(始期)や終わり(終期)をどの時点でとらえるかは、堕胎罪や死体損壊罪など他の罪との区別にかかわる論点として議論されています。

人を死亡させる行為と因果関係

殴打・刺突・絞扼(こうやく)といった直接的な方法のほか、間接的な方法であっても、人を死亡させる危険のある行為であれば実行行為となり得ます。行為と死亡という結果との間に因果関係が認められることが必要です。

故意(殺意)があること

殺人罪は故意犯であり、人が死亡することの認識・認容(殺意)が必要です。殺意には、確定的なものだけでなく「死んでもかまわない」という未必(みひつ)の故意も含まれると整理されています。殺意がなく、暴行・傷害の故意にとどまる場合に人が死亡したときは傷害致死罪(刑法第205条)、過失によって人を死亡させた場合は過失致死罪(刑法第210条)が問題になります。

4. 関連する罪 — 未遂・予備・同意殺人

殺人罪には未遂・予備を処罰する規定があり、被害者の同意がある場合は同意殺人罪という別の罪になります。

罪名 条文 概要 法定刑
殺人未遂罪 刑法第203条 人を殺そうとしたが死亡の結果が生じなかった場合 殺人罪に準じる(減軽され得る)
殺人予備罪 刑法第201条 殺人を犯す目的で準備行為をした場合 2年以下の拘禁刑(情状により免除可)
同意殺人罪 刑法第202条 被害者の嘱託・承諾を受けて殺害した場合等 6月以上7年以下の拘禁刑

殺人罪の成立には被害者の「意思に反して」いることが必要であり、被害者が真意に基づいて同意していた場合は、殺人罪ではなく同意殺人罪(嘱託殺人・承諾殺人)として扱われます。また、殺人を犯す目的で凶器を準備するなどした段階でも、殺人予備罪が成立し得ます。

5. 関連情報・ご相談

関連する身体犯・生命犯については刑事犯罪集の各ページで、ご相談の受付についてはご相談窓口でご案内しています。

【関連する刑事犯罪集】
傷害罪(しょうがいざい) — 傷害の故意により人を死亡させた場合は傷害致死罪
強盗致死傷(ごうとうちししょう) — 強盗の機会に人を死傷させた場合の加重類型(強盗罪のページで解説)

ご家族が殺人事件などで逮捕・勾留された場合の対応でお困りの方は、当事務所にご相談ください。ご相談の受付方法・当日の流れは、ご相談の流れおよび Web 相談予約フォーム でご案内しています。

出典・参考


この記事の担当弁護士: 本田 昭夫(愛知県弁護士会 / 弁護士法人中部法律事務所)
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最終確認日: 2026年7月

※本記事の条文・施行日の記載は、2026年7月時点で施行されている法令に基づきます。個別の事案については弁護士にご相談ください。

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