窃盗(万引き)(せっとう・まんびき)
窃盗罪とは、他人が占有する財物を、その意思に反して窃取した場合に成立する犯罪で、法定刑は 10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 です(刑法第235条)。万引き・空き巣・車上荒らし・スリなど、手口や対象を問わず、他人の占有する財物を盗る行為が広く本罪にあたります。本ページでは、構成要件、法定刑と公訴時効、親族間の特例(親族相盗例)を整理します。
1. 窃盗罪とは — 全体像と拘禁刑改正
窃盗罪は、他人が占有する財物を、その占有者の意思に反して自己又は第三者の占有に移す行為を処罰する財産犯です。
窃盗罪は、他人の占有する財物を、その人の意思に反して窃取する罪です(刑法第235条)。「他人の財物」とは、判例上、他人が占有する財物をいうと整理されており、自分の所有物であっても他人が占有している物を、その人の意思に反して持ち去った場合には、基本的に窃盗罪にあたり得るとされています。「万引き」「空き巣(侵入盗)」「出店荒らし・事務所荒らし」「車上荒らし」「スリ」「自転車盗・自動車盗・バイク盗」「置き引き」など、手口や対象によってさまざまな呼び方がされますが、いずれも刑法第235条の窃盗罪の問題です。
令和4年法律第67号により、令和7年6月1日以降の行為には「懲役」に代わる新たな自由刑「拘禁刑」が言い渡されます。施行日前の行為は経過措置により従前どおり「懲役」となるため、判決書の刑種表記が事件により異なります。
2. 法定刑と公訴時効
法定刑は10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金で、公訴時効は7年です。未遂も処罰されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 罪名 | 窃盗罪 |
| 法令・条文 | 刑法第235条 |
| 法定刑 | 10年以下の拘禁刑(経過措置中の事件は懲役)又は50万円以下の罰金 |
| 公訴時効 | 7年(刑事訴訟法第250条第2項第4号) |
| 未遂 | 処罰される(刑法第243条) |
公訴時効は犯罪行為が終わった時から進行します。被害額が少額の万引き等では、検察官が罰金相当と判断した事案で略式手続(書面審理で罰金を言い渡す簡易な手続)が選択されることがある一方、被害額・態様・前科前歴等の事情により処分は大きく異なります。
3. 窃盗罪の構成要件
窃盗罪の成立には、(1)他人が占有する財物、(2)窃取(占有者の意思に反する占有の移転)、(3)故意、(4)不法領得の意思が必要とされています。
他人が占有する財物
対象は「他人が占有する財物」です。誰が占有しているかは、物の性質・置かれた場所・状況などから判断されます。自分の所有物であっても、他人が占有している間にその意思に反して持ち去れば、原則として窃盗罪の問題となります。なお、法律上、電気は窃盗罪における「財物」とみなされますので、他人のコンセントを勝手に使って充電する行為等は窃盗罪に問われる可能性があります。
窃取・故意・不法領得の意思
「窃取」とは、占有者の意思に反して財物を自己又は第三者の占有に移すことをいいます。窃盗罪は故意犯であり、加えて、判例上、権利者を排除して他人の物を自己の所有物と同様に利用・処分する意思(不法領得の意思)が必要とされています。一時使用にとどまる場合など、この意思が認められないケースの扱いが争点となることがあります。
4. 手口による呼称・関連する類型
窃盗罪は手口を問わず成立しますが、暴行・脅迫を用いた場合や、常習性が認められる場合には、より重い類型が問題になります。
- 強盗罪との違い:財物を奪う際に相手の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫を用いた場合は、窃盗罪ではなく強盗罪(刑法第236条)が問題となります。
- 常習累犯窃盗:窃盗を常習として繰り返した一定の場合には、盗犯等の防止及び処分に関する法律により加重された類型が問題になることがあります。反復的な万引き等の背景に窃盗症(クレプトマニア)などの事情がうかがわれる事案では、再犯防止の観点が論点となることがあります。
5. 親族間の特例(親族相盗例)
一定の親族間の窃盗については、刑が免除され、又は告訴がなければ起訴できない特例があります。
配偶者、直系血族又は同居の親族との間で行われた窃盗・窃盗未遂は、刑が免除されます(刑法第244条第1項)。これ以外の親族との間の窃盗については、告訴がなければ公訴を提起することができません(同条第2項)。
6. いまお困りの方へ — 弁護方針・関連情報
具体的な弁護方針は同じ罪名の弁護方針ページで、いまのお困りごとに応じた対応はニーズ別ページでご案内しています。
窃盗(万引き)事件の具体的な弁護方針・示談交渉の進め方・処分の見通しは、以下のページで詳しくご案内しています。
→ 窃盗・万引き事件の弁護方針|示談・不起訴・執行猶予を目指す
【いまのお困りごとから探す】
- 被害者への謝罪・被害弁償を進めたい → 被害者と示談したい
- 前科を避けたい・不起訴を目指したい → 前科をつけたくない・不起訴にしたい
【関連する刑事犯罪集】
- 強盗罪 — 暴行・脅迫を用いて財物を奪う場合の関連罪名
ご相談の受付方法・当日の流れは、ご相談の流れおよび Web 相談予約フォーム でご案内しています。
出典・参考
この記事の担当弁護士: 尾中 翔(愛知県弁護士会 / 弁護士法人中部法律事務所) → 当事務所の弁護士紹介はこちら
最終確認日: 2026年7月
※本記事の条文・施行日の記載は、2026年7月時点で施行されている法令に基づきます。個別の事案については弁護士にご相談ください。