詐欺(さぎ)
詐欺罪とは、人を欺いて(だまして)財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得る(他人に得させる)犯罪で、法定刑は 10年以下の拘禁刑 です(刑法第246条)。罰金刑の定めはありません。本ページでは、構成要件、窃盗罪との違い、拘禁刑改正のポイントを整理します。
1. 詐欺罪とは — 全体像と拘禁刑改正
詐欺罪は、だます行為(欺罔)→相手の錯誤→財産の交付という一連の流れを処罰する財産犯です。当初からだまし取る意思があったことが必要です。
詐欺罪とは、人を欺いて錯誤に陥らせ、その錯誤に基づいて財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得る(他人に得させる)場合に成立する犯罪をいいます(刑法第246条第1項が財物、第2項が財産上の利益)。だます行為(欺罔)、相手の錯誤、錯誤に基づく交付(処分行為)、財産の移転という因果の流れが必要と整理されています。
当初からだまし取る意思があったことが必要で、借りた時点では返す意思があったものの、後に返せなくなった場合のように、交付を受けた後に生じた事情だけでは詐欺罪は成立しません。
令和4年法律第67号により、令和7年6月1日以降の行為には「懲役」に代わる新たな自由刑「拘禁刑」が言い渡されます。施行日前の行為は経過措置により従前どおり「懲役」となるため、判決書の刑種表記が事件により異なります。
2. 詐欺罪の法定刑と公訴時効
法定刑は10年以下の拘禁刑で、罰金刑の定めはありません。未遂も処罰され、公訴時効(起訴できる期限)は7年です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 罪名 | 詐欺罪 |
| 法令・条文 | 刑法第246条 |
| 法定刑 | 10年以下の拘禁刑(経過措置中の事件は懲役) |
| 未遂 | 処罰される(刑法第250条) |
| 公訴時効 | 7年(刑事訴訟法第250条第2項第4号) |
| 親族間の特例 | 親族相盗例の準用あり(刑法第251条・第244条) |
親族相盗例とは、配偶者・直系血族又は同居の親族の間で行われた詐欺・詐欺未遂について刑が免除され、それ以外の親族との間では告訴がなければ起訴できないとする特例です(刑法第251条が第244条を準用)。なお、コンピュータの情報処理を対象として不正な利益を得る手口については、詐欺罪ではなく電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2、10年以下の拘禁刑)が問題となることがあります。
3. 詐欺罪の構成要件 — 4つの要素
詐欺罪の成立には、(1)欺く行為、(2)相手の錯誤、(3)錯誤に基づく財産の交付(処分行為)、(4)財産の移転が、一連のつながりをもって認められる必要があります。
欺く行為(欺罔)
人をだます行為で、交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ることをいいます。積極的なうそだけでなく、真実を告げる義務があるのに黙っていた場合(不作為)も含まれ得ると解されています。
相手の錯誤と交付(処分行為)
欺く行為によって相手が誤信し、その誤信に基づいて自ら財物を渡し、又は利益を移転させることが必要です。相手の意思に基づく処分行為がある点で、意思に反して占有を奪う窃盗罪と区別されます。
なお、財産上の利益を移転させる詐欺の場合、欺く行為によって弁済期を延期させること等も処分行為に該当し得るとされています。
故意と不法領得の意思
だます認識と、財産をだまし取る意思(不法領得の意思)が必要です。前記のとおり、これらが欺く行為の時点であったことを要します。
財産の移転
財物又は財産上の利益が実際に移転したことが必要です。移転に至らなければ未遂罪の問題となります。
4. 窃盗罪・恐喝罪との違い
詐欺罪は「相手をだまして交付させる」点で、意思に反して奪う窃盗罪、こわがらせて交付させる恐喝罪と区別されます。
| 罪名 | 手段 | 財産移転の態様 | 法定刑 |
|---|---|---|---|
| 詐欺罪 | 欺罔(だます) | 錯誤に基づく処分行為 | 10年以下の拘禁刑 |
| 窃盗罪 | 窃取 | 意思に反する占有移転 | 10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 恐喝罪 | 暴行・脅迫(反抗を抑圧しない程度) | 畏怖に基づく処分行為 | 10年以下の拘禁刑 |
財産が移転した原因が、だまされたことによるのか(詐欺)、こわがったことによるのか(恐喝)、そもそも相手の交付がないのか(窃盗)によって罪名が分かれます。
5. いまお困りの方へ — 弁護方針・関連情報
具体的な弁護方針は同じ罪名の弁護方針ページで、いまのお困りごとに応じた対応はニーズ別ページでご案内しています。
詐欺事件の具体的な弁護方針・示談交渉の進め方・処分の見通しは、以下のページで詳しくご案内しています。
【いまのお困りごとから探す】
- 被害者への謝罪・被害弁償を進めたい → 被害者と示談したい
- 前科を避けたい・不起訴を目指したい → 前科をつけたくない・不起訴にしたい
【関連する刑事犯罪集】
ご相談の受付方法・当日の流れは、ご相談の流れおよび Web 相談予約フォーム でご案内しています。
出典・参考
この記事の担当弁護士: 尾中 翔(愛知県弁護士会 / 弁護士法人中部法律事務所) → 当事務所の弁護士紹介はこちら
最終確認日: 2026年7月
※本記事の条文・施行日の記載は、2026年7月時点で施行されている法令に基づきます。個別の事案については弁護士にご相談ください。