用語集

仮釈放(かりしゃくほう)

【定義】

仮釈放とは、懲役刑または禁錮刑の受刑者を刑期の満了前に仮に釈放する制度です。かつては「仮出獄」といいましたが、2005年に監獄法が「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」へと改正され、「監獄」という用語が使用されなくなったのに伴い、「仮出獄」も「仮釈放」へと名称が変わりました。

【解説】

刑務所内で刑の執行をすることを施設内処遇というのに対し、刑務所外で社会生活を営ませながら保護観察を通じて指導監督を及ぼすことを社会内処遇といいます。刑罰は個々の受刑者を改善矯正し、再犯に及ばないよう更生させることを重要な目的としていますが、受刑者によっては社会内処遇を利用して早めに社会とつなげてあげることが更生に役立つ場合があり、これを可能にするのが仮釈放です。

仮釈放の要件は①有期の懲役・禁錮については刑期の3分の1を終えたこと、無期の懲役・禁錮については10年を経過したことと、②受刑者に改悛の状が認められることです(刑法28条)。手続的には刑務所からの申出を受けて地方更生保護委員会が審理を開き、受刑者との面接等の調査を経て仮釈放を決定します(更生保護法33条〜39条)。受刑者側に仮釈放を求める権利はありませんが、上申書の形で法定の要件が整っていることを資料を示して主張することで、地方更生保護委員会の判断の上で有利に斟酌してもらえる可能性はあります。

仮釈放が決定されると、必ず保護観察が付されます(更生保護法40条)。仮釈放中に新たな罪を犯してしまった場合や、保護観察の遵守事項に違反した場合には、仮釈放を取り消されることもあります(刑法29条1項)。仮釈放中は刑期が進行し、満了を迎えれば保護観察も切れて自由の身となるのですが、仮釈放取消となってしまうと、仮釈放期間は刑期を務めていなかったとみなされ、再び収監されて残りの刑期を務めなければならないことになります(同条3項)。

なお、2016年6月から運用が開始されている一部執行猶予の制度は、刑期の一部を実刑として務めた後に執行猶予期間が始まるもので、機能的にはこの仮釈放による社会内処遇の枠を広げるような側面を持ちます。一部執行猶予が付された場合の実刑部分についても、仮釈放はありえます。

【参考条文】

刑法第28条

懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。

刑法第29条

第1項 次に掲げる場合においては、仮釈放の処分を取り消すことができる。

一 仮釈放中に更に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき。

二 仮釈放前に犯した他の罪について罰金以上の刑に処せられたとき。

三 仮釈放前に他の罪について罰金以上の刑に処せられた者に対し、その刑の執行をすべきとき。

四 仮釈放中に遵守すべき事項を遵守しなかったとき。

第2項 刑の一部の執行猶予の言渡しを受け、その刑について仮釈放の処分を受けた場合において、当該仮釈放中に当該執行猶予の言渡しを取り消されたときは、その処分は、効力を失う。

第3項 仮釈放の処分を取り消したとき、又は前項の規定により仮釈放の処分が効力を失ったときは、釈放中の日数は、刑期に算入しない。

刑法第30条

第1項 拘留に処せられた者は、情状により、いつでも、行政官庁の処分によって仮に出場を許すことができる。

第2項 罰金又は科料を完納することができないため留置された者も、前項と同様とする。

更生保護法第33条

刑事施設の長又は少年院の長は、懲役又は禁錮の刑の執行のため収容している者について、刑法第二十八条 又は少年法第五十八条第一項 に規定する期間が経過したときは、その旨を地方委員会に通告しなければならない。

更生保護法第34条

刑事施設の長又は少年院の長は、懲役又は禁錮の刑の執行のため収容している者について、前条の期間が経過し、かつ、法務省令で定める基準に該当すると認めるときは、地方委員会に対し、仮釈放を許すべき旨の申出をしなければならない。

第2項 刑事施設の長は、拘留の刑の執行のため収容している者又は労役場に留置している者について、法務省令で定める基準に該当すると認めるときは、地方委員会に対し、仮出場を許すべき旨の申出をしなければならない。

更生保護法第35条

第1項 地方委員会は、前条の申出がない場合であっても、必要があると認めるときは、仮釈放又は仮出場を許すか否かに関する審理を開始することができる。

第2項 地方委員会は、前項の規定により審理を開始するに当たっては、あらかじめ、審理の対象となるべき者が収容されている刑事施設(労役場に留置されている場合には、当該労役場が附置された刑事施設)の長又は少年院の長の意見を聴かなければならない。

更生保護法第36条

第1項 地方委員会は、前条第一項の規定により審理を開始するか否かを判断するため必要があると認めるときは、審理の対象となるべき者との面接、関係人に対する質問その他の方法により、調査を行うことができる。

第2項 前項の調査を行うに当たっては、審理の対象となるべき者が収容されている刑事施設(労役場に留置されている場合には、当該労役場が附置された刑事施設)又は少年院の職員から参考となる事項について聴取し、及びこれらの者に面接への立会いその他の協力を求めることができる。

第3項 第十三条及び第二十五条第二項の規定は、第一項の調査について準用する。この場合において、第十三条中「、地方更生保護委員会及び保護観察所の長」とあるのは、「及び保護観察所の長」と読み替えるものとする。

更生保護法第37条

第1項 地方委員会は、仮釈放を許すか否かに関する審理においては、その構成員である委員をして、審理対象者と面接させなければならない。ただし、その者の重い疾病若しくは傷害により面接を行うことが困難であると認められるとき又は法務省令で定める場合であって面接の必要がないと認められるときは、この限りでない。

第2項 地方委員会は、仮釈放を許すか否かに関する審理において必要があると認めるときは、審理対象者について、保護観察所の長に対し、事項を定めて、第八十二条第一項の規定による生活環境の調整を行うことを求めることができる。

第3項 前条第二項の規定は、仮釈放を許すか否かに関する審理における調査について準用する。

更生保護法第38条

第1項 地方委員会は、仮釈放を許すか否かに関する審理を行うに当たり、法務省令で定めるところにより、被害者等(審理対象者が刑を言い渡される理由となった犯罪により害を被った者(以下この項において「被害者」という。)又はその法定代理人若しくは被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。次項において同じ。)から、審理対象者の仮釈放に関する意見及び被害に関する心情(以下この条において「意見等」という。)を述べたい旨の申出があったときは、当該意見等を聴取するものとする。ただし、当該被害に係る事件の性質、審理の状況その他の事情を考慮して相当でないと認めるときは、この限りでない。

第2項 地方委員会は、被害者等の居住地を管轄する保護観察所の長に対し、前項の申出の受理に関する事務及び同項の意見等の聴取を円滑に実施するための事務を嘱託することができる。

更生保護法第39条

第1項 刑法第二十八条 の規定による仮釈放を許す処分及び同法第三十条 の規定による仮出場を許す処分は、地方委員会の決定をもってするものとする。

第2項 地方委員会は、仮釈放又は仮出場を許す処分をするに当たっては、釈放すべき日を定めなければならない。

第3項 地方委員会は、仮釈放を許す処分をするに当たっては、第五十一条第二項第五号の規定により宿泊すべき特定の場所を定める場合その他特別の事情がある場合を除き、第八十二条第一項の規定による住居の調整の結果に基づき、仮釈放を許される者が居住すべき住居を特定するものとする。

第4項 地方委員会は、第一項の決定をした場合において、当該決定を受けた者について、その釈放までの間に、刑事施設の規律及び秩序を害する行為をしたこと、予定されていた釈放後の住居、就業先その他の生活環境に著しい変化が生じたことその他その釈放が相当でないと認められる特別の事情が生じたと認めるときは、仮釈放又は仮出場を許すか否かに関する審理を再開しなければならない。この場合においては、当該決定は、その効力を失う。

第5項 第三十六条の規定は、前項の規定による審理の再開に係る判断について準用する。

更生保護法第40条

仮釈放を許された者は、仮釈放の期間中、保護観察に付する。

【関連用語】

 

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