救護措置義務違反・報告義務違反(当て逃げ・ひき逃げ)
【法令・条文】
道路交通法第117条
第1項 車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があつた場合において、第72条(交通事故の場合の措置)第1項前段の規定に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第2項 前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
同法117条の5
第1項 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
第1号 第72条(交通事故の場合の措置)第1項前段の規定に違反した者(第117条第1項又は第2項に該当する者を除く。)
第2号以下 略
同法119条 次の各号のいずれかに該当する者は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
第1号~第16号 略
第17号 第72条(交通事故の場合の措置)第1項後段に規定する報告をしなかつた者
同第72条
第1項 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
第2項以下、略。
【法定刑】
救護・危険防止義務違反
人身事故 (事故車両の運転者)5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
(加害車両の運転者)10年以下の懲役又は100万円以下の罰金
物損事故 1年以下の懲役又は10万円以下の罰金
事故報告義務違反
3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金
【解説】
交通事故を生じさせた場合、その運転者又は同乗者には、道路交通法72条により、①直ちに運転を停止し、②負傷者を救護するほか、③道路においてその他の事故等が生じないよう危険を防止するなどの措置を講じるほか、④警察官に当該交通事故に関する報告をしなければなりません。
自動車等(軽車両を除く)による人身事故で、救護・危険防止義務に違反した運転者等には、同法第117条第1項が適用されます。もっとも、人身事故の加害者が救護・危険防止義務に違反した場合には、同条第2項が適用され、10年以下の懲役又は10万円以下の罰金という重い処罰が科されます。
一方で、物損事故や軽車両による交通事故において、救護・危険防止義務に違反した場合には、同法117条の5第1号が適用されます。
また、交通事故を生じさせた運転者等が警察官に対する事故報告義務を怠った場合には、同法119条第17号が適用され、3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科されます。
救護・危険防止義務違反罪や事故報告義務違反罪は、故意に行われる犯罪であり、単に交通事故を引き起こした場合と比較して、厳罰に処される傾向にあります。