刑事犯罪集

強制わいせつ罪(きょうせいわいせつざい) ※改正により不同意わいせつ罪に変更

「強制わいせつ罪」は、令和5年の刑法改正により準強制わいせつ罪と統合され、現在は 不同意わいせつ罪(刑法第176条) となっています。法定刑は 6月以上10年以下の拘禁刑 です。本ページでは、令和5年改正による変更点、構成要件、不同意性交等罪との違い、公訴時効を整理します。具体的な弁護方針・ご相談は 不同意わいせつ事件(旧・強制わいせつ)の弁護方針ページ でご案内しています。

1. 強制わいせつ罪から不同意わいせつ罪へ — 令和5年改正と拘禁刑改正

令和5年7月13日施行の刑法改正により、それまでの「強制わいせつ罪」「準強制わいせつ罪」は「不同意わいせつ罪」に統合されました。暴行・脅迫がなくても、同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態を利用したわいせつな行為が広く処罰の対象になっています。

改正前の強制わいせつ罪は、暴行又は脅迫を手段として、相手の意思に反してわいせつな行為をする罪でした。令和5年の刑法改正(令和5年法律第66号、令和5年7月13日施行)により、強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪が統合され、罪名が 不同意わいせつ罪(刑法第176条)に変更されました。改正後は、暴行・脅迫による場合に限らず、心身の障害、アルコール・薬物の影響、睡眠など意識が明瞭でない状態、恐怖・驚愕(きょうがく)、経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力など、条文が列挙する原因により「同意しない意思を形成し、表明し又は全うすることが困難な状態」を作り出し、又はその状態に乗じてわいせつな行為をした場合が処罰の対象となります。
また、16歳未満の者に対してわいせつな行為をした場合は、原則として上記の原因の有無や相手の同意の有無を問わず成立します。

令和4年法律第67号により、令和7年6月1日以降の行為には「懲役」に代わる新たな自由刑「拘禁刑」が言い渡されます。施行日前の行為は経過措置により従前どおり「懲役」となるため、判決書の刑種表記が事件により異なります。

2. 不同意わいせつ罪の法定刑と公訴時効

法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑です。公訴時効は令和5年改正で延長され、不同意わいせつ罪は12年です。被害者が18歳未満の場合は、時効期間がさらに加算されます。

項目 内容
罪名 不同意わいせつ罪(旧・強制わいせつ罪/準強制わいせつ罪)
法令・条文 刑法第176条
法定刑 6月以上10年以下の拘禁刑(経過措置中の事件は懲役)
公訴時効 12年(被害者が18歳未満の場合は18歳に達する日までの期間を加算)
親告罪 該当しない(平成29年改正で非親告罪化、被害者の告訴がなくても起訴可能)
関連する罪名 不同意性交等罪(性交等に至った場合)

公訴時効は、令和5年改正により従来より延長されました(刑事訴訟法第250条)。不同意わいせつ罪の公訴時効期間は12年です。さらに、被害者が18歳未満である場合には、犯行が終わった時から被害者が18歳に達するまでの期間を時効期間に加算する特例が設けられています。

3. 不同意わいせつ罪の構成要件

不同意わいせつ罪は、(1)条文が列挙する原因により同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせ、又はその状態に乗じること(ただし、16歳未満の者に対するわいせつ行為の場合の特例あり)、(2)わいせつな行為をすること、(3)故意、から成り立ちます。

「わいせつな行為」であること

「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいうと整理されています。具体例としては、身体の性的な部位に触れる等の行為が挙げられます。

同意しない意思の形成等が困難な状態

改正後の刑法第176条は、①暴行・脅迫、②心身の障害、③アルコール・薬物の影響、④睡眠その他意識が明瞭でない状態、⑤同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがないこと、⑥恐怖・驚愕、⑦虐待に起因する心理的反応、⑧経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮、という8つの原因(事由)を列挙しています。これらの原因により「同意しない意思を形成し、表明し又は全うすることが困難な状態」にさせ、又はその状態にあることに乗じてわいせつな行為をした場合に成立します(第1項)。このほか、わいせつな行為でないと誤信させた場合や人違いをさせた場合(第2項)、16歳未満の者に対してわいせつな行為をした場合(第3項)も対象となります。

16歳未満の者に対する場合

16歳未満の者に対してわいせつな行為をした場合は、上記の原因の有無や相手の同意の有無を問わず成立します(第3項)。ただし、相手が13歳以上16歳未満の場合は、行為者が相手より5歳以上年長であることが要件となります。

4. 不同意性交等罪との違い

不同意わいせつ罪と不同意性交等罪は、行為が「性交等」に至ったか否かで区別されます。性交等に至った場合は、より重い不同意性交等罪となります。

罪名 条文 主な区別ポイント 法定刑
不同意わいせつ罪 刑法第176条 わいせつな行為(性交等に至らない) 6月以上10年以下の拘禁刑
不同意性交等罪 刑法第177条 性交・肛門性交・口腔性交・所定の挿入行為に至った場合 5年以上の有期拘禁刑

両罪を分けるのは、行為が条文にいう「性交等」に至ったか否かです。なお、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪はいずれも未遂も処罰されます(刑法第180条)。また、電車内での痴漢のように、態様によっては迷惑行為防止条例違反ではなく不同意わいせつ罪として扱われる場合があり、どの罪名で起訴するかは、検察官が捜査結果に基づいて総合的に判断します。

5. いまお困りの方へ — 弁護方針・関連情報

具体的な弁護方針は同じ罪名の弁護方針ページで、いまのお困りごとに応じた対応はニーズ別ページでご案内しています。

不同意わいせつ事件(旧・強制わいせつ事件)の具体的な弁護方針・示談交渉の進め方・処分の見通しは、以下のページで詳しくご案内しています。

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出典・参考


この記事の担当弁護士: 尾中 翔(愛知県弁護士会 / 弁護士法人中部法律事務所) → 当事務所の弁護士紹介はこちら

最終確認日: 2026年7月

※本記事の条文・施行日の記載は、2026年7月時点で施行されている法令に基づきます。個別の事案については弁護士にご相談ください。

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