刑事弁護の基礎知識

刑事事件の流れ

刑事事件の流れ

刑事事件の発生から、第一審判決言渡しまでの流れです。

①刑事事件の発生

  • 被害者が警察に相談
  • 届出(被害届・告訴・告発)
  • 110番通報
  • 職務質問や現行犯
  • 自首

などにより、警察が刑事事件の発生を認識します。

②警察等による捜査

  • 被害者や容疑者、目撃者など事件関係者への取り調べ・事情聴取・聞き込み
  • 実況見分・現場検証
  • 家宅捜索や差押え

などの警察による捜査が行われます。

③警察による事件処理

捜査の結果を踏まえて、刑事事件を

  • 検察官に送致するか、
  • 送致しないで終了(微罪処分)するか

を、警察が判断します。検察官に事件送致されなければ、刑事事件は終了です。

④検察官による事件の捜査

刑事事件が検察官に送致されると、検察官による捜査が行われます。

警察による捜査を前提として、補充的に被害者や被疑者への取り調べがなされます。

⑤検察官による終局処分

全ての捜査結果を踏まえて、検察官が、

  • 被疑者を正式裁判・公判請求により起訴するか、
  • 略式で起訴するか、
  • 起訴しないか(不起訴処分)

を決定します。不起訴であれば、刑事事件は終了します。

⑥略式起訴・略式命令

略式起訴された場合、すぐに裁判所から略式命令が出されて刑事事件は終了します。

⑦公判請求・正式裁判

公訴提起された場合、公訴提起の約1~2ヶ月以内に、裁判の日(公判期日と呼ばれます)が指定され、裁判が開かれます(※公判前整理手続が行われる事件(裁判員裁判等)を除く)。

【刑事裁判の流れ】

(1)冒頭手続
  • 人定質問:裁判官が被告人に対して、氏名、生年月日、住所、本籍や職業などを尋ね、本人確認を行います。
  • 起訴状朗読:検察官が起訴状を読み上げ、当該刑事裁判における審理の対象を明らかにします。
  • 罪状認否:被告人(弁護人)が、起訴された罪について、認否(認めるか、争うかを明らかにすること)を行います。
(2)証拠調手続
  • 証拠調手続の最初には、検察官が冒頭陳述(検察官が証拠によって証明しようとする事実を明らかにする手続)が行われます。事件によっては、弁護人による冒頭陳述が行われる場合もあります。
  • 検察官や弁護人・被告人が証拠を提出し、提出された証拠を法廷で取調べます。
  • 供述調書や実況見物調書などの書証のほか、当該事件に関する物証、証人や被告人に対する尋問が行われます。
(3)最終弁論
  • 論告・求刑:検察官が、証拠調べによる立証を終え、明らかとなった事実をまとめ、被告人の処罰・量刑について最終の意見を述べます。例えば、「被告人を懲役●年に処するのが相当である」などと、検察官が求める刑罰をいいます。
  • 弁護人の弁論:弁護人が、証拠調べによる立証を終え、明らかとなった事実をまとめ、被告人の処罰・量刑等について、最終の意見を述べます。例えば、「被告人に対しては、執行猶予付き判決を求める」などと、弁護人が被告人の弁護を図ります。
  • 被告人の最終意見陳述:被告人が最後に事件についての意見を述べます。
(4)結審

裁判所が、刑事裁判の審理を終えます。

以上の手続について、多くの自白事件((1)の罪状認否で被告人が罪を認める事件)では、1回(1時間程度)の手続で審理が終了します。
ですが、否認事件の場合や、1人の被告人に対して複数の罪が起訴される場合、証人尋問が行われる場合、裁判員裁判など、1回の審理では手続が終了せず、第2回、第3回と複数回公判期日が開かれる場合もあります。

公判(刑事裁判)が開かれて、審理を経て、判決が言い渡されます。

⑧判決言い渡し

裁判所が、判決を言い渡します。

判決主文で、有罪・無罪、有罪の場合は刑罰の内容、刑罰の執行を猶予するか否か、執行猶予判決で保護観察処分をつけるか否か、罰金刑の場合は労役場留置における1日あたりの日当、訴訟費用を被告人に負担させるかどうかなどが言い渡されます。

言い渡された判決の内容に不服がなければ、事件は終了し、不服がある場合は、14日以内に控訴することができます。

刑事事件の流れと身体拘束(逮捕・勾留)

①逮捕

●警察による逮捕から、48時間以内に、検察官に事件・身柄が送られます

被害者や容疑者、目撃者など事件関係者への任意の取り調べ・事情聴取・聞き込み、実況見分・現場検証などの捜査を踏まえ、逮捕の必要性がある場合、警察は被疑者を逮捕します。
警察が犯人を逮捕した場合、逮捕から48時間以内に、被疑者と事件の捜査資料等を検察に送らなければなりません。

 ②被疑者勾留

●検察官が、24時間以内に、釈放か勾留請求を行います

被疑者及び事件の送致を受けた検察官は、24時間以内に、引き続き被疑者の身体を拘束するかどうか判断しなければなりません。
検察官は、被疑者に対して速やかに取り調べを行い、引き続き被疑者の身体を拘束する場合、裁判所に対し、24時間以内に、勾留請求を行います。
被疑者の身体を拘束する必要はないと判断する場合、24時間以内に、被疑者を釈放しなければなりません。

●勾留請求の後は、裁判官が勾留を決定します
●検察官が勾留請求をすると、被疑者に対し、裁判官による勾留質問が行われます。

裁判官が、被疑者の弁解を聞き、勾留の必要があると判断した場合、勾留を決定します。勾留の必要がない、勾留の要件を欠いているなどと判断した場合、勾留請求は却下され、釈放されます。

●勾留は最大20日間

この段階の勾留は、被疑者勾留と呼ばれます。
被疑者勾留は、まず、勾留請求の日を含めて10日間の範囲で、裁判官が決定します。ただし、被疑者勾留は、必要な場合、さらに最大10日間の延長が可能です。
勾留を延長する場合、検察官が勾留延長請求を行い、裁判官が延長するかどうかを決定します。延長の際は、裁判官による被疑者への勾留質問は行われません。

③被告人勾留

●不起訴処分/略式起訴なら釈放

検察官は、被疑者勾留の満期までに、被疑者を起訴(公訴提起・公判請求)するか、略式起訴にするか、起訴しない(不起訴処分)かを決めます。
被疑者勾留は、その満期・期限までに、起訴(公訴提起・公判請求:正式な刑事裁判の審理を求めること)しない限り、その効力を失います。つまり、略式起訴や不起訴処分の場合、勾留期限を過ぎれば、釈放されます。

●被告人勾留に対しては、保釈請求ができます

起訴されると、被疑者は、被告人と呼ばれるようになり、被疑者勾留は被告人勾留として、身体拘束が続きます。
被告人勾留は、原則として2か月間、判決まで、その後1か月ごとに更新されます。
ただし、被告人勾留に対しては、保釈請求が認められています。保釈請求が認められれば、身体解放されます。

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