当番弁護士(とうばんべんごし)

【定義】

当番弁護士とは、逮捕された人が一度だけ無料で弁護士に接見に来てもらい、アドバイスを受けることができる制度です。
 

【解説】

(1)当番弁護士制度の意義
 刑事訴訟法は起訴された後の被告人にはもちろん、起訴される前の被疑者にも弁護人依頼権を認めています(刑訴30条1項)。しかし、費用を負担する資力がない人のための国選弁護制度は、2006年9月以前は被告人にしか認められておらず、被疑者は私選で依頼しない限り弁護人の援助を受けることができない法制度になっていました。そのような制度の下で身柄拘束された被疑者をサポートするため、日本弁護士連合会が立ち上げたのが当番弁護制度です。
 その後、法改正により被疑者の国選弁護制度がスタートしましたが、その対象は一定以上の重罪事件に限られており(刑訴37条の2)、身柄拘束された全事件をカバーするには至っていません。そこで、国選弁護の対象にならない事件については、今なお当番弁護士によるサポートの意味は大きいといえます。
 また、被疑者国選弁護の利用条件として、資力が基準額以上の被疑者は事前に弁護士会に対し「私選弁護人紹介」を依頼する手続を経なければならないこととされたのですが(刑訴31条の2、37条の3第2項)、日弁連は当番弁護制度にこの「私選弁護人紹介」の役割を同時に果たさせることにして、運用しています。つまり、当番弁護士を依頼して接見に来てもらうと、同時に弁護士会からの「私選弁護人紹介」も受けたことになり、国選弁護人請求の条件が整うという仕組みです。
 被疑者国選弁護について詳しくは、「弁護人」の項をご参照ください。
 
(2)利用の仕方
 被疑者本人、または家族・友人等から弁護士会に連絡して依頼することができます。被疑者本人の場合、裁判所や警察を通じて依頼の連絡をしてもらうこともできます。弁護士会では依頼を受けると、当番として待機している弁護士に連絡を取り、その弁護士が原則としてその日のうちに接見に行くことになっています。接見時間の長さに特に決まりはありませんが、たとえば検察庁に来てもらう場合など、接見場所によって制約を受けることがあります。
 依頼の理由にも決まりはありません。家族に連絡を頼みたい、今後の流れや処分の重さの見通しを知りたい、取調べにどのように対応すべきかアドバイスが欲しい、ただ不安だから、など何でも構いません。はっきりした目的がある場合には、接見に来た弁護士に早めに伝えて接見時間を有効に活用しましょう。ただし、外部との連絡には罪証隠滅の問題があり得るため、弁護士は慎重に対応します。
 当番弁護士として接見に来た弁護士は、上記のとおり私選弁護人紹介制度で紹介された弁護士でもあるため、そのまま私選弁護人として依頼することができます。弁護士会の規則により、弁護士は原則としてこの場合の私選の依頼を受任しなければならないことになっています。もっとも、私選ですからその弁護士の定める費用がかかります。この費用が用意できないが弁護人を付けたい場合、被疑者国選弁護の請求をすることになります。改めて裁判所に請求する手続きが必要になり、別の弁護士が選任されるのが通常ですが、当番弁護士となった弁護士から自分を国選弁護人として指名するよう希望を出すこともでき、弁護士によってはこの対応を取ってくれる人もいます。また、国選弁護の対象にならない事件については、被疑者弁護援助制度という弁護士会の制度もあり、費用の援助を受けられることがあります。
 

【参考条文】

刑事訴訟法第31条の2

 
第1項
弁護人を選任しようとする被告人又は被疑者は、弁護士会に対し、弁護人の選任の申出をすることができる。
 
第2項
弁護士会は、前項の申出を受けた場合は、速やかに、所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を紹介しなければならない。
 
第3項
弁護士会は、前項の弁護人となろうとする者がないときは、当該申出をした者に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。同項の規定により紹介した弁護士が被告人又は被疑者がした弁護人の選任の申込みを拒んだときも、同様とする。
 
刑事訴訟法第37条の2
 
第1項
 
死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件について被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。
 
第2項
 
前項の請求は、同項に規定する事件について勾留を請求された被疑者も、これをすることができる。
 

刑事訴訟法第37条の3

 
第1項
 
前条第一項の請求をするには、資力申告書を提出しなければならない。
 
第2項
 
その資力が基準額以上である被疑者が前条第一項の請求をするには、あらかじめ、その勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。
 
第3項
 
前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。
 

【関連用語】

  • 弁護人
  • 逮捕
  • 勾留
  • 接見
 
刑事事件で身柄拘束されるというのは、被疑者となった方にとって権利利益が脅かされる緊急事態です。普段は弁護士に縁がないという方でも、簡単かつスムーズに弁護士と接点を持てる仕組みが重要なのです。その意味で、当番弁護士制度は是非積極的に活用していただきたいと思います。もっとも、いずれ私選で依頼することを考えるのであれば、最初から刑事事件に強い弁護士を選んで接見に行ってもらう方が効率がよく、お勧めです。当事務所では名古屋エリア(愛知県・岐阜県・三重県)内について当番弁護士並みの即日面会を実施しています。また、正式なご依頼前に初回接見に赴いた上でご相談をお受けすることもできます。是非ご検討ください。

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