刑事弁護の基礎知識

身柄事件と在宅事件の違い

身柄事件とは、在宅事件とは 

身柄事件とは、被疑者・被告人の身体を拘束の上、捜査や裁判が進められる事件をいいます。

他方、在宅事件は、被疑者・被告人の身体を拘束せず、捜査や裁判が進められる刑事事件をいいます。

 
身柄事件と在宅事件の違い 

被疑者・被告人の身体を拘束するかどうか、身柄事件か在宅事件かによって、刑事事件の捜査や裁判手続き・進行に、具体的に次のような違いが生じてきます。

捜査段階/起訴前/被疑者段階

  • 取り調べなどの捜査
    身柄事件では、留置所から取調室等に被疑者を移動させ、取り調べなどの捜査が行われます。
    これに対し、在宅事件では、警察や検察官から呼び出しを受け、警察署・検察庁に任意出頭し、取り調べなどの捜査を受けます。

 

  • 弁護人の選任
    身柄事件でも在宅事件でも、被疑者は弁護人を選任することができます。
    ただし、国選弁護人は、身柄事件又は起訴された場合でないと選任されません。起訴前の在宅事件では国選弁護人が選任されることはないため、逮捕や勾留、起訴を回避するための弁護活動を望む場合は、私選弁護人を選任する必要があります。

 

  • 捜査の期間
    逮捕や被疑者勾留には、逮捕から最大23日までの間に起訴しない場合は、釈放しなければならないという厳格な時間制限があります。
    そのため、身柄事件では、逮捕から最大23日という比較的短期間で捜査が終了します。
    これに対し、在宅事件は、このような時間制限がありません。そのため、身柄事件と比べて捜査に比較的長期間を要する場合が少なくありません。

刑事裁判

  • 刑事裁判への出廷
    身柄事件では、身柄を拘束されたまま、留置所や拘置所などから裁判所へ移動し、刑事裁判に出廷することになります。※法廷内で手錠と腰縄が外されます。
    これに対し、在宅事件では、裁判所から刑事裁判への呼び出しを受け、刑事裁判に出廷します。

 

  • 刑事裁判の進行・期間
    刑事裁判の進行や期間について、身柄事件か在宅事件かで、大きな違いはありません。
    もっとも、身柄事件で被告人段階の勾留は、未決勾留と呼ばれ、未決勾留の日数が一定以上ある場合、相当の日数について、懲役刑や禁固刑などの刑をすでに執行したものとして算入されることがあります(刑法21条)。
    未決勾留の算入は、判決主文で、例えば、「被告人を懲役1年に処する。未決勾留日数30日をその刑に算入する」などと言い渡されます。被告人勾留が長くなったため、判決を言い渡した時点で、懲役1年の内、すでに30日はその刑の執行を終えたものとして計算されることになります。 
     

身柄事件か在宅事件か 

刑事事件といえば、逮捕・勾留などの身柄事件が通常であると思われがちですが、犯罪全体の件数からすると、在宅事件の方が多く、むしろ身柄事件の方が例外といえます。

事案や被害の重大な事案でなければ、住居があり、家族や友人がいる、仕事や学校があるなど、逃亡や罪証隠滅のおそれがない場合、在宅のまま事件の捜査や裁判が進められることも多いです。

もっとも、捜査段階において身柄事件となるか在宅事件となるかは、具体的事案に応じた捜査機関側の対応・判断に委ねられているところが大きいです。
身柄事件とすると時間的制約を受けるため、当初は在宅事件として任意捜査を中心に証拠を集め、証拠が十分揃った段階で、逮捕・勾留して身柄事件に切り替えるという場合があります。他方で、現行犯逮捕など、当初は身柄事件として捜査が開始されても、本人の反省やその後の捜査で逃亡や罪証隠滅のおそれがないと分かり、釈放されて在宅事件として事件処理される場合もあります。

 


 
弁護士法人中部法律事務所は、名古屋駅前徒歩4分の刑事事件に強い弁護士・法律事務所です。身柄事件(逮捕・勾留)は避けたい、在宅事件にしてほしい、釈放してほしいなど名古屋エリア(愛知・岐阜・三重)の刑事事件は、当法律事務所にご相談下さい。来所初回30分無料相談を実施しています。 

関連記事

刑事事件の流れ

刑事事件の流れ 刑事事件の発生から、第1審判決言渡しまでの流れです。   ①刑事事件の発生 ●被害者が警察に相談 ●届出(被害届・告訴・告発) ●110番通報 ●職務質問や現行犯 などにより、警察が刑事事件の発 … 続きを見る

刑罰の種類-懲役,禁固,罰金,拘留,科料,没収-

刑事裁判で有罪判決となる場合、判決主文で刑罰が言い渡されます。 刑罰の種類として、刑法第9条が「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。」として、6種類の主刑と、没収という附加刑を規定していま … 続きを見る

判決の種類・執行猶予付き判決

  判決の種類・分類 刑事裁判で言い渡される判決には、次表のとおり、いくつかの種類・パターンがあります。 その大きな分類は、有罪判決か無罪判決かです。 実務上は、多くの刑事裁判で有罪判決が言い渡され、犯罪の成立を争わない … 続きを見る

被害届・告訴・告発

被害届とは、告訴とは、告発とは 被害届・告訴・告発は、一般的には混同されがちで、意味や違いの分かりにくいところです。 被害届を出すことは、被害者が捜査機関に対し犯罪に遭った被害の事実を申告することをいいます。 告訴とは、 … 続きを見る

私選弁護人と国選弁護人の違い

私選弁護人とは、国選弁護人とは 刑事事件の弁護人といえば、私選弁護人と国選弁護人。ただ、これらの違いは一般的には分かりにくいところです。 私選弁護人とは、ご本人(被疑者や被告人とされている方)やご家族が、委任契約に基づい … 続きを見る

逮捕と勾留の違い

逮捕とは、勾留とは 逮捕は、ニュースなどでもよく使われていますが、勾留は、あまり聞き慣れず、逮捕との違いも一般的には分かりにくいところです。 逮捕とは、被疑者に対する短時間(最大72時間)の身体拘束をいいます。 逮捕は、 … 続きを見る

前科・前歴の違い

前科とは、前歴とは 前科と前歴は、一般的には混同されがちですが、刑事事件、刑事弁護では、全く異なるものです。 前科とは、有罪判決を受けた経歴のことをいいます。 懲役刑・禁錮刑だけでなく、罰金刑であっても、有罪であれば前科 … 続きを見る

保釈と釈放の違い

釈放とは、保釈とは 釈放は、一般的な言葉の意味として、身体拘束から解放されることをいいます。逮捕、勾留、懲役刑や禁錮刑の執行などによって留置場や拘置所、刑務所などから出られること、身体解放されることを釈放といいます。 こ … 続きを見る
名古屋駅徒歩4分 無料法律相談実施中